子三刻(AM0:00)

三つを申し上げます」


 ぽん

 ぽん

 ぽん


 午前0時を告げる鼓が鳴り始めました。


 ぽん

 ぽん


「今何回?」

 広い広いご邸宅の渡り廊下を光る君が走り抜けます。


 ぽん


「6回っす!」

 管一がスペシャルドリンクを差し出しながらそう告げます。


 ぽん

 

 ぽん


「え? 聞こえなかった! ああもう何回かわかんねぇ!」

 子の時の鼓は9回鳴ります。





 ぽん


「殿っ!」

 紫子さまに差し上げる花束ブーケ。弦一郎から光る君へバトンリレーならぬノールックブーケリレーでございます。


 こん


 こん


 こん


「みんなっ! ありがとなっ!」


 左腕を突き上げ光る君、ラストスパートでございます。


 とうとう日付が変わろうとしています。ヴィレッジすぷりんぐにスライディングでご登場でございます。よく磨いてある簀子縁でよかったですわね。


「シンデレラ! 紫ちゃん! おまたせっ!」

 ぜえぜえと。

 息も絶え絶えの光る君でございます。

「さあ、12時になっても魔法のとけないシンデレラ。出かけようか」

 さくら色のブーケを差し出されます。


「待ってたわ。光くん」

(【超訳】おっそいわねぇぇ)

「マイプリンセス。俺のシンデレラ」

「嬉しいわ。光くん」

(【超訳】あなたにプリンセスはいるのかしらね?)

「さっ! 真夜中ドライブに行こっ!」


 ピットインしていた牛車の元へとまいります。ちなみに牛さんは先ほどの牛さんと交代しております。


「キミとならこのまま星まで駆けて行けそうだよ」

「死ぬほどキミに恋してる」

「いつだって俺は本気だぜ」

 幾分息の整った光る君は牛車の中で紫子さまの手をとり愛のお言葉を振りまきます。


 なんでしょう。この達成感。


 なんでしょう。この安堵感。

 

 なんでしょう。この幸福感。


 さすがは人たらしの人たらしたる所以とも申しましょうか。憎めないお人柄の光る君ではございます。


 本日の光る君の動向のおさらいでございます。

 卯三刻(AM6:00) パレス六条にご帰還

 未三刻(PM2:00) ヴィレッジうぃんたーにて姫子さまのお誕生日会

 酉一刻(PM5:00) ヴィレッジおーたむにて秋子さまにご挨拶

 酉三刻(PM6:00) ヴィレッジさまーにて花子さまと夕さまのディナーに乱入

 戌一刻(PM7:00) ヴィレッジうぃんたーにて明子さまとカクテルタイム

 亥一刻(PM9:00) バー朧月夜にて月子さまとオフィシャルデート

 子一刻(PM11:00) パレス六条に戻って藤子さまへの満月儀式

 子三刻(AM0:00) 紫子さまと真夜中の牛車ドライブデート 


 明日のご予定は……

 現時点では未定。

 まためくるめく1日をお過ごしになられるのでしょうね。


 これは光る君のとある1日、特別でない1日、パレス六条ではままある1日の出来事でございます。


 no love no life


 本日もパレス六条まことに平安なり、でございます。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋するオトコの1日 ~ no love no life ~ 桜井今日子 @lilas-snow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ