孤独と愛とアイデンティティが感じられる作品
- ★★★ Excellent!!!
孤独と愛とアイデンティティの3つが切実に感じられる作品でした。
世界観は哀しく儚いもので、その中に残された感情人形(フィーリング・ドール)もまた同じ印象を纏っていますが、そこにはどこか強さもあるように、私には思われました。
それは、読み進めると少しずつ感じられてくるしっかりとした自我の気配、自分は何者なのかという問いに対する答えを胸に秘めていることが窺えるからではないかと思います。
そのアイデンティティが、かつての持ち主と過ごした時間に根差したものであるというのが、とても好きでした。
そのために、持ち主との何でもないようなやり取りの中に、「絆」とか「友情」などの言葉に片付けられないものを感じました。
彼女が彼女でありえた理由が、そこにある、というのは、とてもすごいことだと思いますし、それを短い文章の中で十分に描けるということもすごいことだと思います。