個人的に勇者が出てくる話ってあんまり読まないので、勇者物=勇者にとって都合の良い世界観で繰り広げられる物語というイメージがあったのですが、こちらの作品は独特の雰囲気があって新鮮でした。
人々が無意識に享受している平和とか、勇者に押し付けられた責任とか、そういう明るい英雄譚では中々描かれないような部分にスポットライトが当てられています。
そりゃ危ない葉っぱに頼りたくもなるよね、と思わず納得。でもこの勇者、ちゃんと勇者でした。
変に正義感だけで塗り固められた勇者よりよっぽど人間味があります。
勇者だからって綺麗事だけで何でもできるわけじゃない、そんなことを考えさせてくれる作品です。
なんてものを書いちまったんだ!!
でもそうか、そうだよな! そうなるんだよな!
倫理観、道徳感、勇者像、あらゆる概念が吹き飛ぶ荒廃ファンタジー。
ファンタジー作品で勇者が魔王を倒すそのカタルシスに浸り、読み耽っていたかつての自分に、狂気という名の短剣が突き付けられる。
勇者と少女、世界と紫煙、魔物と騎士。いったいどちらが狂っているのか。或いはどちらも狂っているのか。
どっちなんだ、選べるのか?
活字の向こう側で寝そべって他人事みたいに物語を追っているだけの私に。
綺麗事で塗り固められた明るい世界の裏側にフォーカスを当てた大問題作。
しかしだからこそ、そこには真実がある。