最後の瞬間にも、温かな明かりを灯す人がいるのだ。

一話目の主人公は料理屋の店主だ。
世界の終りが予告されている日、彼女は店を開く。やっと持てた自分の居場所。それでも、郷里の家族のことは気になる。
美味しそうな料理とともにその心のゆらぎがあらわれたとき、私は胸の底に震えを感じずにいられなかった。なんと美しく、優しい感性を持つ作家さんなのだろう。

ほかにも、別れたままの想い人、幼馴染どうしのおじさんたち、幼い子どもと、いろいろな人の心模様が立ち現れる。
結末として訪れる風景まで、ぜひご覧いただきたい。

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