これほど愛おしく描き出した作品があったでしょうか――あのスライムを。

これほど愛おしく描き出した作品があったでしょうか。あのスライムを。そして、人間を。

ちょっと遊んだ感じのレビューを書きたくなってしまうのは、この作品が持つワクワク感や親しみやすさ、そして作者様の人柄が滲み出る真摯な筆致についつい心を開いてしまうからではないかと思います。
シリアスかと思ったら不意にコミカルに畳み掛けてきたり。異世界で懸命に生きる彼らの姿に時に胸が熱くなり、思わず涙したり。こういう作品本当に好きだなぁと、内心呟きながら夢中で拝読しました。

常に作品に寄り添う作者様の描く世界はどこか優しくて、情があり、温もりを感じます。血の通った作品とでもいいましょうか。
綺麗事で済ませたくなることもこの作者様は真摯に描いていて、『もしかして今自分が正しいと思ってることは本当に正しいのだろうか? 』と、拝読しながら自分も持っているかもしれない思い込みを不意に感じてドキリとしました。そこを切り捨ててしまわず絶妙なバランス感覚で作品として纏め上げてるところに、作者様の力量と、作者として作品の世界を見守る愛情の深さを感じます。

非日常の世界で描かれる日々の営みの中に、懸命に生きようとする彼らの意気地を感じます。
かえって新鮮な驚きと喜びをもって、人情とでも言うべき感情に触れられる本作品は、エンターテインメントそのものではないかと思います。

忘れたくないモノが沢山詰まったこの作品、これからの時代もぜひ生き残って欲しいと、願わずにはいられません。

にこにこマート、大好き。

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