私もこの作品が好きです。ブレイクしましょう。

一気読みした。
それはもう、夢中になって読みふけった。
それからというもの、ここ数日、日常生活に支障をきたすレベルでこの作品のことしか考えられなくなっている。
頭がどうにかなりそうなので、すべて吐き出すつもりでレビューを書こうと思った。

この作品の良さってなんだろう。
もちろん、いい話であるというのは言うまでもないのだけど、それだけでは言い足りない。
起承転結がしっかりしていて、構成がうまい。
二度、三度と読むとそれがよくわかる。
文章がこなれており読みやすく、地の文と台詞とのバランスもいい。
各話のタイトルもしゃれているし、表題さえもうまく使いこなしている。
総じて、巧みさのある作家さんだと思う。



さて、ここからは少しネタバレになるので、まだ読了されてない方は先に本編をどうぞ。

この作品も男性向けラブコメとして、「地味な少年」と「美少女」とのボーイミーツガールというテンプレは守っている。
でも、それが嫌味に感じられないのは、よくある萌え系作品のように、ヒロインがいかに可愛らしいかをくどいほど強調するのが本筋にはなっていないからだろうか。
その代わりに二人の価値観――生き方・考え方が噛み合い、まるでユニゾンのように重なり合うところを丁寧に描いている。
恋愛ものとして、この作品が上質だと感じるのはそこだ。

さらに言うなら、「美少女」という要素さえも伏線のひとつにしてしまって、作中でちゃんとそれを回収しているところもいいなぁと思った。
「美少女」であるからこその悩み、苦しみ、生きづらさ、そういうものがちゃんとあって、「地味で、人付き合いは苦手かもしれないけどまっすぐな、優しい少年」に支えられながらそれらを乗り越えていく。
だから「美少女」が単なる記号になっていない。

某所で作者自身が述べておられるように、キャラクターの造形がしっかりしているということなんだろう。
不器用で、理屈っぽい二人だからこそ、丁寧に気持ちを伝える。言葉にする。
この作品の台詞回しは、そのひとつひとつがグッと来るのだけど、それが自然で、心地よいものに感じられるのは、ちゃんとした裏付けがあってこそだ。

そして、恋に落ちた二人がただくっついた、というだけで話は終わらない。
恋をすることでお互いが少しずつ変わっていき、前向きに生きられるようになってゆく。
だからこそ、いい恋をしたね、と目を細めて二人を祝福できる。
本当に、読んでよかったと思える作品だった。



最後に、書籍化決定おめでとうございます。
作中で理華が廉に繰り返し告げたように、私もこの作品と、この作家さんが、もっと愛されてほしい。
そう願ってやみません。

その他のおすすめレビュー

ヤマネさんの他のおすすめレビュー12