魔法は詠唱して扱うものであるという前提があるこの世界において、声の出せない魔法使いの少女カナリア。初登場シーンからかなりインパクトがあり、その異様な存在感をバキバキに訴えてきます。
第一章は彼女の途方もない強さ、そして数々の出会いと別れを入念に描かれており、特に主人公のカナリアはもちろん、重要なキャラも同じページ内であっさり死んでしまうようなキャラでも個性がしっかりとしていて、本当に一人一人の人間が意思を持って動いた結果……!
それをカナリアが容赦なく粉砕していく!!!!
そんなお話でした…!!!
全ての出来事がカナリアという可憐で不可思議な魅力を持つロリを引き立てる最高のスパイスとなっています!!!
そしてカナリアがどうしてそこまで強く、謎多きキャラなのかを解き明かしていく第二章……。彼女自身にスポットを当てた物語となっております。
楽しみすぎて脳が溶ける…!!!
私が「啼かないカナリアの物語」を拝読させていただいた時の様子を述べたい。
家事? え? そこに山盛りの洗濯物があるけど? ここ読み終わったら、やるやる。
食事? そろそろ時間だね。この山場乗り越えたら、やるやる。
掃除? 寝れる所があれば十分! 今良いところだから邪魔しないで! 後でやるやる!
洗濯をせず着る服がなくなり、食事は疎かになり、至る所に埃がたまりました。
まさに生活の危機。
それでも読む手を止められなかった!
ただ裏を返せば、生活に刺激が増えたとも言えるわけです。
新しい刺激を求める貴方に、まず一話読んでいただきたい。
生活は危機的状況になるかもしれないけれど、楽しいですよ。
無口で最強の冒険者。しかもそれがヒロインというこの設定。ドはまりでした。
まず、始まってすぐのお色気シーン。(描写によると”色気”は少ないのかもだが)それが無理なくきれいに収まっている上に、説明的な文にならずいい具合に興味を引いてくる。また、最初に少しずつ明かされていく主人公の情報から謎が謎を呼び、さらにこの物語を読ませたくさせてくる。実はまだ三話しか読まさせてもらっていないのだが、久しぶりに金の卵、いや、もう生まれているのかもしれないが、素晴らしい掘り出し物を見つけた気分だ。
個人的にはとても好きだった。これからも読まさせていただきたい。
面白い。
一章を読み終え、一区切りしたところで、そう確信した。
ひとことで言うなら「暗黒童話風ファンタジー」だろうか。
ライトノベルの文脈では、紅玉いづき『ミミズクと夜の王』、新井円侍『シュガーダーク』などの系譜にある作品。
あるいは、私自身はあまり詳しくないが、ボカロ系の楽曲でも一時期ブームが来ていた"あのへん"の流れに位置する。
主人公は幼さの残る少女ながら最強クラスの魔法使いで、多彩な魔法をあやつるさまは、神坂一『スレイヤーズ』以来の伝統にも沿う。
魔法がある種の技能(テクニック)であり、テクニカルに工夫し行使しえるというのも、同様。
カナリアと呼ばれるその少女は、音声を発することができず、会話はもっぱら手に持った魔道具「石版」を用いておこなう。
一般に魔法は「呪文を唱えて行使するもの」と信じられている(らしい)世界にあって、無声で魔法を行使しえる彼女はしばしば俗世の理解の範疇外にあり、魔法を封じ込めた魔道具を使いこなしているだけだろうと誤解される。
カナリアとともに旅をする連れ(バディ)となるのが、その呼び名のもとともなっているカナリア型のゴーレム、シャハボ。
こちらは音声を発することができ、独自の知能をもっていて、状況によってはカナリアの代弁をすることもあるほか、普段はツッコミ役、もといカナリアのよき相棒としてふるまう。
いささか口が悪い。
この奇妙な一人と一羽が、ゆく先々でさまざまな事件と出会うロード・ノベル。
というのが、この作品の大枠であろうと思われる。
ファンタジー感あふれる、なかなか魅力的なお膳立てですよね。
ところが話はそう単純ではない。
この奇妙な一人と一羽がかすんでしまうくらい、いずれの登場人物も一癖二癖ある人物ばかりで、始末に負えない。
一章でいえばこいつが実質"裏の"主人公じゃねーか的なイザック・オジモヴをはじめとして、下手をすれば主役を食ってしまうくらいにアクの強い面々が揃っている。
そんな一筋縄ではいかない登場人物たちのさまざまな思惑が入り乱れ、事態は二転三転の様相を見せる。
カナリアに感情移入することはできなかったものの(残念ながら)、どう話が転がるのか、先が気になってしょうがなくて、第三者的視点で一気に読み進めてしまっていた。
こういうのは存外珍しいかもしれない。
小道具から筋書きまで、この作品は異世界ファンタジー的なイマジネーションに満ち満ちている。
そのイマジネーションの豊かさには、ただただ舌を巻く。
特に私がお気に入りだったのは、すたれかけた地元の古き伝統料理を愛食することで、古き伝統を知る地元民の信頼を得るくだり。
背後に歴史の重みがよこたわっている、そのずっしりとした感じは、非常にファンタジーらしいと感じ入る。
文章力という面では正直、まだ粗削りだなと感じるところはある。
しかし、それを力技でねじ伏せてしまうくらいの、磨けば輝くだろうと思わせる原石の魅力が、この著者にはある。
見どころを感じたのは、出だしで設定をだらだらと語るのではなく、どちらかといえば説明は抑制的に、謎は謎のままで物語を進めていって、徐々にいろいろなことを明らかにしていくという手法。
読者を物語に"乗せる"上では非常に有効な手法だと思っているので、ぜひ強調しておきたい。
往年のファンタジー系レーベル新人賞に応募していたら、佳作で入選するくらいの出来にはすでになっていると思うけど、できれば編集さんに赤入れてもらって改稿しっかりやって……そしたらちゃんと売り物になりそうな気がしている。
誰か手を出さないかなぁ。
あるいはこの作品でなくとも、この作家さんはいずれ化けそうな予感がする。
そういう期待も込めつつ、このレビューを捧げます。
主人公のかわいさもさることながら、この作品に驚かされるのは個性豊かな脇役の存在だろう。顔も名前もないモブですら、その心模様で、時には大胆な行動もとってしまう。正に生きている人間を観察しているかのように思えた。
そしてなんといってもストーリーの奥深さが凄い。最初はバラバラに散らばった話を追っているように思えるのだが、物語が進むにつれて、どんな小さな話にもその全てに意味があったことを読者は理解していく。
だというのに、この物語はどういった結末を迎えるのか。まったく予想が出来ない。
とても目が離せない作品だ。