少女の成長に涙する、地に足の着いたファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
好きで好きでどうしても好きでやりたいこと。それを奪われたら魂が死ぬほどの、好きなこと。
主人公フラミィにとって、それは踊ることだった。
けれど彼女は足の指の骨が欠けていてうまく踊れない。
ならば生まれてくるときに貰いそこねた骨を探そう。物語はこうして動く。
舞台は地図にない南の島。
神様や不思議な生物が登場するファンタジーでありつつ、他者との関わり方を描く人間ドラマでもある。
嬉しいとか悲しいとかいう単純な言葉だけでは説明しきれない複雑な感情を経験し、重大な選択を迫られるフラミィ。
自分にとって何が最も大切なのか?
その問いは主人公と対立する少女にも投げかけられる。
島の外からやってきた考古学者の視点により、世の中は戦争というきな臭い情勢であることがわかる。
けれど島の人間は戦争を知らない。間近で行われているのに、彼らはそうした悲劇から守られている。理由がある。
後半の盛り上がり、回収されていく伏線は涙なくして読めなかった。
卑劣な行いをした者が必ずしも悪だとは限らない。
欠けていることが憎むべきものとも限らない。
悩み、選んで辿り着いた彼女たちの結末までぜひ読んでほしい。