After FINAL 射程極振り弓おじさん、極 -KIWAMI-
ミシ……ミシミシ…………ミシミシミシ……ッ!
……いや、宝箱の中身だけでも回収しておこうか。
船が破壊されたら宝箱も一緒に失われる可能性がある。
まあ、そんな厳しい仕様とは思わないが、保険をかけておいて損はない。
俺は宝箱をそっと開いた。
中に入っていたのは……翡翠のように美しい緑色の玉!
しかも、7つだ!
一体何だこれは……!?
◆風の
風を司る竜神の力を宿した宝玉。
竜神に認められた証であり、武具に竜神の力を宿すことが出来る素材でもある。
7つの竜の玉が揃っていると、なんだかすごいことが起こりそうな気がするが、説明文を読んだ感じ、これは普通に素材アイテムみたいだな。
武具に風の竜神の力を宿す……。
予想していた通り、風雲装備をさらに先の段階へ進化させるための素材……そんな気がしてならない。
早く地上に戻ってウーさんの工房に行き、作業を進めてもらわなくては……!
ありがたいことに、雲の繭に向かう道中で風雲装備の修復に足りていなかった素材がすべて集まった。
これで風雲装備は復活する!
ただ、レア装備の修理には結構時間がかかる。
そこからさらに修復した装備を進化させるとなると、どれだけ待ち時間が発生するのか想像もつかない。
だからこそ、少しでも早く仕事を依頼したい!
「いや、焦るな……焦るな……」
そう自分に言い聞かせる。
アルテミス号は飛行するのもやっとの状態。
無理をさせれば、完全に崩壊したっておかしくはない。
風雲神竜と共に戦った仲間であるアルテミス号をそんな目に合わせたくないからな。
俺はこの船で地上に帰るんだ!
◆ ◆ ◆
その後、アルテミス号は無事風雲の隠れ里に帰還した。
船体はボロボロ、燃料もカツカツだったが、俺の船は見事に役目をまっとうしてくれた。
すぐさま隠れ里の職人に船の修理を依頼し、俺自身は空上郷にあるウーさんの工房へと急いだ。
そこらじゅうを駆け回って集めた素材をウーさんに渡し、修復を依頼する。
全部で6つある風雲装備すべての修復が完了するには、大体12日かかるそうだ。
……長い! 完全に壊れたからところから新品の状態に戻すのだから仕方ないとはいえ長い!
しかし、俺はその作業時間を短縮する方法を知っている。
ウーさんの好物である桃……『仙桃』を渡せばよいのだ。
仙桃1つで1つの作業を一瞬で完了させることが出来る。
つまり6つ集めれば、12日間の作業時間もゼロになる……!
ただ、仙桃がどこで手に入るのかは……知らないんだよなぁ。
前は天女さんにオマケで貰っただけだし……。
いや、ならば入手方法を調べるところから始めればいいだけだ。
時間はたっぷりあるし、俺には紅白装備もある。
風雲装備を修理に出したら身動きが取れなくなる以前の俺とは違う。
修理の最中にも冒険を続けるだけさ。
「あ、そういえばレベルが上がっていたな」
スカイマップに出てくるモンスターはみんな強力だったからか、貰える経験値も非常に多く感じた。
レベルはスカイマップに入る以前の35から40に到達。
いよいよ上限である50レベルも見えて来たな……。
そして何より、今回手に入った5レベル分の強化ポイント75を『星域射程』のステータスに振ると、装備やスキルの補正値なしで1000を超えるようになるのだ。
初期職『射手』の20レベル×5ポイントで100。
第2職『弓使い』の30レベル×10ポイントで300。
そして特殊第3職『
これまで積み重ねてきた1000ポイントで、俺は素で1キロメートルの射程を得た!
感慨を覚えつつ、俺はポイントを振っていく。
『固有ステータスの数値が1000に到達しました。特殊値「
……なんだって?
完全に油断していたから、システム音声を理解出来なかった。
えっと、『極』とかなんとか言っていたような……。
困ったときはまずステータスを確認だ!
◆ステータス
名前:キュージィ
職業:
属性:火/氷
Lv:40/50
HP:250/250(+90)
MP:180/180(+40)
攻撃:690(+600)
防御:270(+230)
魔攻:40
魔防:170(+140)
速度:50
星域射程:極
お、思った以上に極まってる……!
もはや『星域射程』のステータス欄に入っているのは数値ではない……文字だ!
これは一体どういう効果になるんだ……!?
反射的に『極』の文字をタッチすると、説明文が表示された。
『射程無限(一部スキル奥義に例外あり)。装備やスキルによる射程の上昇値は攻撃へと振り分けられる』
「ははは、射程無限って」
思わず笑ってしまう。
でも、これは現実だ……!
固有ステータスは強化ポイントを1000振ることで『極』となるのだ!!
もしかしたら、これを発見したのは俺が最初かもしれない。
本来、固有ステータスだけに強化ポイントを振るのは、賢い選択とは言えないからな……。
でも、そんな賢くない……もっと言えば頭の悪いプレイスタイルも、極めた先にはこんな素敵な結末が待っていた。
正直、どこまで射程に振り続けるのかというのは、俺の中でいつか答えを出さなければならない問題になっていた。
それがまさかゲーム側から答えを提供してくれるとは、まったく想像もしていなかった。
なんてサプライズだ!
まるでNSOが俺を認めてくれたようで、嬉しい気分になる。
しかも、追加効果の『装備やスキルによる射程の上昇値は攻撃へと振り分けられる』というのも非常に強力だ。
ステータスを見てみると、本来+400だったはずの攻撃補正値が+600になっている。
これは射程にプラスされていた200が攻撃に移った証拠だ。
相変わらず耐久面は即死を恐れないといけないレベルだが、攻撃面は並にはなったと言っていいだろう。
より遠くから、より確実に敵を仕留める。
それを体現する『極』のステータス……。
今、俺はゲーム開始当初から目標に掲げていた『射程を極めること』をついに成し遂げたのだ。
だから、俺の冒険はここでおしまい……なのか?
いや、そんなことはない。
なぜなら、俺にはまだこのゲームでやりたいことがたくさんあるからだ!
それにむしろ、ここからが本当の始まりなのかもしれない。
……だって、やっとなれたのだから。
自分も他人もNSOも認める、本当の『射程極振り弓おじさん』に!
◆ ◆ ◆
射程極振り弓おじさん
-END-
射程極振り弓おじさん【コミカライズ開始!】 草乃葉オウル@2作品書籍化 @KusanohaOru
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