After Data.47 弓おじさん、嵐に吹かれて
すさまじい握力で船体の右側面部が握りつぶされていく……!
さらに右のウイングも破壊され、プロペラを2つ失った!
これでは加速はもちろんのこと、飛行のバランスも維持できない……!
いや、加速とかバランス以前にこのままで船が完全に破壊されてしまう!
なんとかこいつを引きはがさなければ……!
「ヴルル……ッ!」
エイティが【ダイヤモンドダストショット】を発動する。
細かい氷の粒を拡散させるこの奥義は、敵との距離が近いほど当たる粒が多くなり威力が増す。
この状況にはぴったりの技だ。
「ガー! ガー!」
ガー坊は【
そうだ、敵が近くにいるということは、それだけ攻撃が当てやすいということ!
ここはひるまず攻撃をするタイミングなんだ!
「アルテミスの船首像、起動! 風雲神竜を狙え!」
船首の女神像が動き出し、弓を構え……ない!?
女神像は振り返ろうとして、そこで止まってしまった。
なぜだ……? 燃料は足りているし、女神像はまだ傷ついていないのに……。
「まさか、あれ以上体をひねれないのか……?」
女神像の体……硬っ!
いや、元は石像なんだから硬くて当然なのだが、関節が硬い!
リアルの俺でももう少し柔軟に体をひねれるぞ……!
これでは女神像から見て斜め後ろにいる風雲神竜を狙い撃てない。
攻撃範囲は正面から真横までが限界……検証しておくべきだった!
しかし、今更文句を言っても仕方がない。
ここはもう1つの高火力技【
キョオオ……キョオッ……ォォォォォォ…………ッ!!
その時、風雲神竜が船体から離れ落下していった。
ご丁寧に船体の一部をひっぺがしながら……!
エイティとガー坊の攻撃がよほど効いたようだが、まだ倒せてはいない。
いずれまた攻撃を仕掛けてくるだろう。
だが、アルテミス号は右のウイング1つとそれに装備されていたプロペラ2つを失った。
こうなるとバランス的に左のプロペラを稼働させることが出来ない。
実質、船体に直接装備されているビッグプロペラだけが加速装置になる。
これではブレスの回避すら難しい……。
いっそのこと、アルテミス号をおとりにして風雲神竜に攻撃させ、その隙に大技を当てるか?
……いや、風雲神竜の知能は非常に高い。
今の攻撃で接近すれば大ダメージを食らうと学習しているだろうし、わざわざ近づいてボロボロの船を破壊しに来ることはないだろう。
それこそ遠距離からのブレス攻撃で十分なのだから……。
「……ん?」
遠距離からの……ブレス攻撃?
「それだ……!」
また俺は弱気になっていた!
遠距離からの飛び道具の撃ち合いこそ俺の真骨頂!
まさに相手から自分の土俵に入って来てくれた状態……!
しかも、空気のブレスには息を吸い込むという明確な溜め動作が存在する。
その隙に十分準備できる……【
あの技なら正面からブレスを打ち消し、風雲神竜に大ダメージを与えられる!
「エイティ、ガー坊、その場で待機だ! 全員船の上に集まって、的を絞らせるぞ!」
ダメージから復帰した風雲神竜が羽ばたき、アルテミス号の真後ろに陣取った。
船の真後ろにはビッグプロペラがあるので、甲板から後ろの敵を狙うのは難しい。
しかし、バルーンの上の見張り台からなら問題ない!
「ワープ、見張り台!
ちゃんと風雲神竜が息を吸い込む動作を確認してから発動する。
大きいバルーンを買っておいて良かった。
見張り台もそこそこ広いから、バリスタの発射台を設置するだけのスペースがある!
「発射ッ!」
激しい空気のブレス、輝く十字の光刃は同時に放たれ、俺と風雲神竜の中間地点で衝突した!
目に見えない空気とぶつかっているというのに飛び散る火花!
一瞬拮抗しているように思えた2つの大技だったが、すぐに光の刃が押し始めた!
やはり【
だが、油断はしない。
初志貫徹……ここにもう1発お見舞いする!
「左のプロペラを全開だ!」
左のプロペラだけを回せば船体は前には進まず、その場でくるりと回頭する!
そうすることで前を向く……女神像が!
「アルテミスの船首像、再起動!」
さっきは起動しただけで矢を撃っていないから、燃料は消費していない。
女神像の正面に敵をもってくれば問題なく攻撃を行える……!
「アルテミスアロー、発射!」
放たれた白銀の矢が光の刃と交じり合い、まばゆく輝く!
もはやこの矢の攻撃力は計り知れない……!
空気のブレスを一気に押し切り、風雲神竜に直撃する!
その時、視界が光に包まれた。
真っ白で……何も見ない。
だが、慌てる必要はない。
俺はこの光を知っている。
「……勝った」
視界が戻って最初に飛び込んできた景色は、突き抜けるような青空だった。
雲の繭は消え、風雲神竜もいない。
そう、この何もない青空こそ、竜に勝った証なのだ。
穏やかな風が心地よい……。
ミシ……ミシミシ…………ミシミシミシ……ッ!
何かが
あ、そういえばこの船……ボロボロだったんだ!
「ワープ、甲板へ!」
見張り台から甲板に戻り、すぐさまエイティに地上への帰還命令を出す。
アルテミスの矢を2発使ったから燃料も結構減っている。
それに空中要塞との戦いの後、さらに雲の繭の中で戦ったから現在地がわからない。
実質、空の迷子と言っていいだろう。
これはなかなかあわただしい凱旋になりそうだ……。
だが、勝利したことに変わりはない。
甲板には風雲神竜のドロップアイテムを収めている宝箱がある。
さらに俺のレベルも40に達した。
無事帰還出来たら、そこらへんのチェックを行おう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます