第2話

 既にログインしていた、ルイカルさんにメッセージを送る。


『こんばんは』


 すると、すぐに返信がくる。


『シアン殿こんばんは。今日も見目麗しいな』


 シアンとは俺の事だ。見目麗しいと言うのも俺の事だ。

 なぜ男の俺に見目麗しいなどとのたまうかと言うと、俺のアバターが女性だからだ。


 何故俺が女性アバター操作してるかと言うと、それはこのゲームの仕様に起因している。

 このゲームでは男尊女卑とも言われかねない仕様が施されている。

 男性アバターを選ぶよりも女性アバターを選んだ方が初期ステータスが2分の1も低いのだ。

 難しい設定でゲームをしたかった俺は女性アバターを選んだ。


『ではそろそろクエストにでも出向こうか』

『そうだな』



 その後、俺たちは一通りクエストをこなすとチャットルームに戻った。

 12月に突入したと言うこともあり、ルイカルはこんな話題を俺に振る。


「所でクリスマスは予定を立てたか?」

「一応な。でも……」


 俺は言い淀む。


「かなり脆い予定だ」

「と言うと?」

「実はな会社の後輩をデートに誘おうと思ってるんだ。レストランも既に予約してある」

「前に言ってた女の子か?」


 ルイカルは俺の好きな人を知っている。

 ついでに言うと、その相手と進展がない事もすでに相談済みだ。


「そうだよ」

「て言う事は少しは脈が出てきたって事?」

「いや全然。それに向こうはかなりモテるだろうから、今頃予定が入っててもおかしくない」

「脈がないのにレストランを予約してるとは、かなり男気を感じるな」


 ルイカルの言い方に含みはない。


「そんな大層なもんじゃないさ。ただ覚悟をしたかったんだよ」

「なるほど……。でも俺は評価したいがな。俺に評価された所でしょうがないだろうが」


 ルイカルは謙遜するがその気持ちが嬉しかった翔太は率直に答える。


「そんな事は無い。ありがとう」


 そして話題の矛先をルイカルへ向ける。


「ルイカルさんはどうなんだ? クリスマス」

「自分は今のところ予定はない」

「でも好きな人いるって言ってたろう?」

「確かに好きな人はいるが、シアン殿みたいに誘う勇気はないよ」

「そのセリフは本当に誘ってから言って欲しいな」

「そうするよ」


 ルイカルは時計を見る。


「もうこんな時間か......。明日も早いんだろ?」

「お互いな」

「じゃあ、寝るとするか」

「そうだな」

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