第3話
お昼休み、翔太はご飯屋さんに来ていた。
もちろん1人ではない。
男性部下1人と女性部下2人を連れている。
女性部下の中には俺が好意を寄せている汐路さんの姿もある。
メニューを頼み終えた俺たちは談笑タイムに突入する。
「クリスマスって皆さんもう予定立てました?」
話題を提供してくれたのは、汐路さんじゃないほうの女性社員だ。
俺はは昨日のルイカルとの会話を思い出す。既視感。
俺はこの話題のネタがない。
だからみんなの反応を伺う。
すると男性部下がいち早く反応する。
「俺はね彼女と高級レストランでデートする事になってるっすよね」
「羨ましいなぁ。 彼女ってこの前言ってた女の子か?」
「そうっすよ。翔太さん、よく覚えてたっすね」
「まぁな。あの時のお前、かなり男らしかったから」
以前、この男性社員の恋愛相談に乗ったことがある。
その際、男性社員は悩んでいた。
意中の相手に告白するかどうかを。
「あの時、翔太さんが背中を押してくれた事は、今でも感謝してるっす」
「そんなに感謝しなくていいよ。俺は話聞いただけだから。それより、〇〇さんはどうなの? クリスマス」
「私もですね」
声の質がワントーン上がる。
この語り初めでわかる。
なぜこの女性社員がクリスマスの話題をみんなに振ったのか。
それはみんなに自慢したかったのだ。
自分の予定を。
「私もですね。彼氏と〇〇って言うレストランに行く事になってるんですよ」
俺はそのレストランの名前に聞き覚えがあった。
「〇〇って。確か、三つ星じゃなかった?」
「翔太さん、詳しいですね」
「まぁな。行った事はないけど。かなり高い上に予約が全然取れないって話をよく聞くな」
「そうなんです。彼氏頑張ってくれちゃったみたいで」
女性社員の表情がほころんでいる。
相当嬉しいのだろう。
一方で汐路さんの表情は険しい。
クリスマスの話題が嫌なのかもしれない。
それなのに女性社員は汐路さんに話を振る。
「汐路さんは予定あるの?」
すると、俺の心臓の鼓動が激しくなる。
汐路さんの発言次第では、デートに誘う事すら危ぶまれるからだ。
心の中で質問を否定してくれと手を合わせる。が......
「わ、私もありますよ」
願いとは裏腹な答えが返ってくる。
言葉を呑み込むのに時間がかかる。
たった一言『私もありますよ』と言う言葉を理解した途端、絶望が襲ってくる。
しかし、表向きは平静を装おう。
「そ、そうか。みんな羨ましいなぁ」
「暮山さんは、予定ないっすか?」
ショックを受けていることに他の人間は気づいていない。
一旦、一安心し会話を続ける。
「無いよ」
「えー!、嘘だー。暮山さんモテるのに? ねぇ、汐路さん」
よりにもよって汐路さんに話を振る。

「う、うん」
汐路さんの歯切れが悪い。
それが気になるが。
「彼女いないからな」
「モテるのは、否定しないっすね」
「揚げ足を取るな」

男性社員に軽いチョップを入れる。
すると嬉しそうに。

「冗談すっよ」
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