第4話
夜、お風呂上がり。
食事も既に済ましている。
今は、1日の中でも数少ない自由な時間だ。
スマホのパスコードを解除する。
慣れた手つきでゲームアプリを開いた。
ゲーム内での友達であるルイカルは既にログインしている。
「ルイカルさん。こんばんは」
すると、今日も今日とてすぐに返信が来る。
「シアン殿、こんばんは。本日も見目麗しいな」
2人は挨拶を終えた。
普段ならこの後すぐにでもクエストに向かうのだが、今日の俺はそれを許さない。
本日あった出来事を、どうしても話したかったのだ。
「クエストに行く前に話がしたいんだが......」
「構わないぞ」
ルイカルは気持ちよく承諾してくれた。
「この間話した事、覚えてる?」
「クリスマスの日に意中の相手をデートに誘うと言う話か?」
「そう。それで今日、たまたま好きな人のクリスマスの日の予定を聞く事が出来たんだ」
「どうだった?」
「既に予定がある。そうだ……」
「そうか......」
ルイカルの口調はため息まじりだ。
「実はな。俺もシアン殿の同じく、意中の相手のクリスマスの予定を聞く事が出来たんだ」
「本当かっ!」
「あぁ......」
言葉尻が弱い。
これは良い返事が聞けなかったと見える。
「予定は無いそうだ」
思いがけない返事にびっくりする。
「良かったじゃないか」
しかし、そんな事はないらしく。
「そうでもないんだ......」
「何故だ?」
「意中の相手のクリスマスの予定を聞いた時。俺も予定を聞かれたんだが……」
「......」
「クリスマスの日は、予定があると答えてしまったんだ……」
「何っ!? 何故そんな事を言った!」
「会話の流れ的にな......。恥ずかしかったんだ、予定がないと言うのは」
「そう、だったのか......。その時の状況はわからないが、確かにそう言う事もあるよな......」
俺は自分の事でも無いのに、心の底から落胆する。
2人共、文字を打つ指は自然と止まっていた。
長い沈黙の後、俺はこんな提案をする。
「クリスマスの夜、合わないか?」
「リアルでか?」
「そう。折角レストランも予約してる事だし」
「だがそれは、シアン殿が好きな人と時間を共にするために予約した場所だろ?」
「でも今からキャンセルするのも、勿体ない。折角だったら行った方が良い」
それに、ルイカルとならクリスマスを共に過ごすのも悪く無い。
例え男2人だろうと、良い思い出になる気がする。
俺はそんなふうに考えていた。
「じゃあその誘い、乗らせて貰おう」
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