第6話


 失敗した後輩を含め同僚たちは皆帰った。

 その中には汐路さんの姿もあった。

  帰り支度を急いでいる様に見えたのは多分気のせいではない。

 今夜のデートが楽しみなのだろう。


 俺はクリスマスの夜に1人会社に残っている。

 残業だ。

 この後、予定がない訳ではない。

 ゲームで知り合った友人と会う約束をしている。

 だが、この分だと約束に間に合いそうにない。

 だからその旨をチャットで伝える。


『ルイカルさん。ごめん、約束の時間に間に合いそうに無い。急遽残業になってしまった。もしあれだったら今日はもう中止にしよう。本当にごめん』


 すると、すぐに返事が来る。


『シアン殿。こんばんわ。残業なら仕方がない。そこまで反省しないでくれ。そちらが良いのであれば、私は待つ。状況が変化した場合またメッセージを送ってくれ。無理をしないようにな』


 ルイカルのメッセージに心が温まる。

 やる気が出る。

 この熱が冷めないうちにパソコンに向かう。


 後輩は今日1日かけてこの書類を作っていた。

 経験年数1年の後輩がだ。

 俺が作るとなるとざっと見積もって3時間と言う所だろう。


 今は夕方の5時半。頑張れば9時にはルイカルさんと合流できそうだ。

 俺は気合を入れた。

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