軽快でコメディタッチな出だしから、読み応えのある伝奇モノへ突き進む物語

 冒頭からしばらく読んだときは、てっきり超能力ないし異能をフックに使ったコメディな学園モノかと思ったんですよ。文体もスピード感を重視した一人称で、演出も道化師のように飾ったものですから、このままお笑い方面に進んでいくのかなと。

 ところが話が進めば進むほど地縁と血脈の絡み合うディープな伝奇モノに変貌していきます。

 この変貌こそが、日常の中に潜んでいる色眼という異物を浮き彫りにすることになります。

 主人公は命を狙われているのです。本人がまったく知らない理由で。

 そもそも物語開始当初の主人公は、自分自身がなぜ特殊能力を使えるのかわかっていないため、変貌していく人間関係に翻弄されっぱなしです。次々とトラブルに巻き込まれては、意外な人物が色眼を使えることがわかってくるため、まるでミステリー小説のように周囲の人間を疑うようになります。

 すべての人間が真実を語っているとはかぎらず、また事情通と思われる人も言い伝えられたものを語るばかりですから、客観的な情報が存在しないまま、主人公は真実を求めて日々を生き延びていくことになります。

 このレビューを書いた時点では、物語は完結していませんが、しかしもうすぐ最終章に入るようですよ。今まで積み重なってきた謎がようやく解けたので、がんじがらめになった虚構を元の形に戻すために、主人公たちは奔走することになりそうです。

 今から読み始めれば、最新話に追いつくあたりで、この物語は最終章のおいしいところに突入しているはずですから、今から手を出すのがちょうどいいタイミングなのかもしれませんね。

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