第6話 混乱

「タケ、ヤス、兄貴、すまんのう、こうするしか無いじゃけぇ」

 隆二の前のバリケードは破壊され既に突破されていた。ゾンビたちは既に幹部の食事会が開かれていた料亭の外にまで飛び出していった。人を見つけると全力で襲いかかってくるゾンビたち、身を隠しているだけじゃいずれ見つかる。だが、幹部連中を殺してしまえば組が終わる、放おっておけば自分が殺される。それらを天秤にかけ、被害を少なくするためまだ料亭内に残っている下っ端のタケ、ヤス、自分の兄貴分を射殺することに決めた。

 獲物を探しキョロキョロとしているところを確実に一人づつ、頭が弾ける。最悪の気分だ。こんな時にあれがあれば……

 三人がいなくなり一先ず静かになった廊下を駆け抜け、兄貴分の胸ポケットをまさぐり、ビニールパッケージを取り出す。シャブだ。

 根っからのシャブ中だった兄貴はポケットに入れたメガネケースに注射器も隠し持っている。それを拝借し、注射器にシャブを詰め水差しから水を引き一心不乱に注射器を振り水溶液を作る。

 荒い息をたて、左腕の内肘に針を立てる、一発で静脈に当たる。独特の臭いが鼻を付き、全身の毛が逆立つ。

「……っふぅ。それにしてもこの状況はなんなんだ。さて、どうするか」

 ゾンビ共はまるで獣のようで、頭は働かないらしい、こちらにはチャカがある。

 危険を承知で叫んだ。

「おい! 誰かまともな奴はいるか!」

「隆二さん!? 隆二さんですか! こっちです、カウンターの影にいます!」

 最近入った下足番のフミヤスの声だった。

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