第3話 ゾンビ襲撃

 山下組内部では恐ろしい惨劇が繰り広げられていた。

 タケとヤスはぶらんと力なくその腕を垂らし濁った目つきで身体も口周りも血だらけにしフラフラと歩いている。

 どうやらあの新型ドラッグ、イノセントシンドロームは、血液中に残るわずかな成分でも相手を”感染”させてしまうようだ。

 隆二は目の前の光景が信じられなかった。幹部会の食事の席は一瞬の騒乱で血の海に染まった。そして起き上がる死者たち、そう、あれはまるで死者、人の目をしていない生きる屍、ゾンビ、残った若人が家具でバリケードを作り今は事なきを得ている。だがゾンビたちはもう力の加減を知らない、このバリケードもいつまで持つだろうか。

 隆二は震える腕をもう一方の腕で押さえつけ、チャカを確認した。だが、もしかしたら症状が収まる可能性もある、それなのに幹部連中を撃ってしまったら組が終わってしまう。

 隆二は揺れるバリケードとチャカを交互に何度も見比べた。

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