特別装備研究官編

第6話 しょうかく、出港

「CICなんですけど、注意して欲しいことが


ありまして・・・。」


薄暗く、奥がそんなに見えない通路で急に声をかけられる。突然すぎてビックリしてしまう。


「ひゃい!・・・メモするので待ってくださ


い。」


メモを急いで取り出す。


「いいですか?CICは敵に入られないよう、


カードキー、指紋認証、あと歩き方を確かめ



る機械が付いてまして、変に緊張して心拍数


が上がったり、ぎこちない歩き方をすると警


報が鳴っちゃうので注意してくださいね。」


CICはカードキー、指紋認証、歩容認証付き。緊張すんな!!


と書き込んでおく。


「了解しました。」


「って話しているうちに着きましたね。・・・変


に緊張しないで下さいよ。」


やっと着いたようだ。甲板からどんくらい離れてんだよここ。


・・・・・・おいおい、なんか急に緊張してきたぞ。くっそ!ふざけんなよ!


「そんなこと言われたら逆に緊張しちゃいま


すよ!!」


「あはは。じゃあ、時間ありますし緊張が収


まるまでここで待ちますか。」


「いや、逆に緊張してしまうのでいいです。」


この人絶対お調子者だ。柊はそう確信する。


確信している内に佐藤三佐はカードキーとIDを打ち込み、先に進んで行ってしまう。


「じゃあ先に行ってますね。」


「ちょっと待ってくださいよ!!」


そう言い終わる前に行ってしまった。・・・警報なったら恨むからな!!覚えてろよ!!と、IDを打ち込みながら心の中で叫ぶ。




先に進むと警備員らしき人が奥に座っている。・・・・・・なんかここマンションの1階みたいだな、と思ってしまった。







ここで大きな問題が発生する。どう通ればいいのか忘れてしまった。


どうすればいいのか、とあたふたしていると警備員の人が来て親切に教えてくれた。優しい。






そんなこんなでやっとCICの前に着いた。目の前には "遅かったな” と言いたそうな佐藤三佐がいる。



「警報鳴らないで通れたんですね。じゃあそろそろ中に入りますよ。」


おい!なんだコイツ!超ムカつくんですけど!!


「分かりました!」


そう言って佐藤三佐について行く。


















CICは広かった。てっきりこんごう型位だと思っていたが、それよりも大きい。そして最新機器が大量に搭載されている。


・・・入って内装を見ていると、艦長らしき人物がこちらに歩いて来る。


「おうおう、・・・河村さんが自分の椅子に座らせたっていうのはお前さんかい?」


「はい。本日より1年間配属されます、旭川柊艦艇関係・特別装備研究官室長代理です。1年と短いですがよろしくお願いします。」


「お、おう。最近のヤツっていつもこんな堅苦しいのか?そんな緊張しなくてもいい。俺の名前は中村希(なかむら のぞみ)だ。こっちこそよろしく頼む。」


「ところで艦長。艦隊司令はどこにおいででしょうか。」


「ん、あのジジイか?どうせ自分の部屋でプラモでも作ってんじゃねーの?」


「了解しました。ではそろそろ行きましょう。」


「は、はい。・・・では失礼します」


「おう。・・・・・・そうだそうだ!ジジイにそろそろ出港するって伝えといてくれ!!」


「了解です。」








通路を戻って途中で曲がったり、階段を登ったりして艦隊司令室にやっと着く。


そして背筋を伸ばし、コンコンコン、とドアを3回ノックする。


「司令、今宜しいでしょうか?」


「はい、どうぞ。」


すっ、とドアを開けて中に入る。


「失礼します。司令、本日より1年間特別装備研究官として先程乗艦した旭川柊研究官を連れて参りました。」


・・・・・・、艦隊司令は山積みの書類の間のところで、ちよだのプラモデルを作っていた。


「んー、ちょっと待って。ああ、そこに紙置いといて。後ちょっとだから。・・・・・・よし、出来た!そんで紙は・・・ここか。」


「旭川柊研究官。えー、2028年2月22日生まれ?ゾロ目かー。いいね。・・・で、25歳。白露国際高等学校、黎明大学総合工学部卒業の超エリート。ほーん。白露国際高等学校なんて聞いたことねーな。そんで初めて設計したのは「ふゆたち」型無人艦ねぇ。で今に至る、と。」


「はい。」


「んー、君はこの艦に乗ったらしてみたいと思ってた事とかある?」


突然の質問に驚きつつも、してみたい事を考える。


「してみたいことですか?んー、・・・・・・そうだ!艦長席に座ってみたいと思ってました!!」


「なんでなんで?」


子供が質問してくるかのように聞いてくる。


「だって艦長席って滅多に座れないし、豪華じゃないですか。」


目だけは好奇心旺盛だが、顔は残念そうにしている。これは何かあるな。


「えー、座るだけなの?」


そういう事か。と、一瞬で理解する。


「いやあ、出来るのであれば操縦もしてみたいですが、それはさすがに無理ですよね。」


とりあえず言ってみる。さてどうなるのか?


「よし、気に入ったから操縦させてあげよう。」


「ありがとうございます!」


やっぱり!さっきのはフリだった。・・・普通は操縦させて貰えないのにさせてもらえる。これは素直に嬉しい。


「・・・・・・んで、あのバカ野郎はなんか言ってたか?」


佐藤三佐に司令は質問する。


「出港するからジジイ呼んでこいとか言ってました。」


おーい!!そのまま言うなよ!キレたらどうすんだよ!


「ったくあいつは・・・。んじゃあそろそろ行くかぁ。」


・・・キレてない。っていうか気にもしていない。さすが艦隊司令をしてるだけあるな。




「では我々も行きますか。」


「はい。」


そして上に向かう。




「司令入ります。」


上に上がるとすぐ声がかかる。


「全艦放送繋げ。」


入ってからすぐにそう司令は言った。その発言を聞いた途端クスクス笑い声が聞こえる。


「・・・全艦繋がりました。」


ん?何が始まるんだ?と心配していると、大きな声で話し始める。


「艦隊司令より全隊員に告ぐ。今から始まるのは訓練ではない。実践、わかりやすく言えば第三次世界大戦だ。重症になった奴は腕立て500回の刑に処す、分かったな。・・・全員死なない程度で死んでこい。以上。」


「回線切りました。」


なんだったんだ、今の話は。


「・・・ラッパよーい。司令、出港します。」


その考えを遮る形で艦長が出港許可を司令に要請する。


「了解。」


許可がおりた。すると大きく息を吸い、号令をかける。


「出港用意!」


パパラパ〜パパラパ〜パパラパララッパラ〜



「出港よーい!」


スピーカーから聞こえる。するとすぐに


「1番離せ〜。」


と何処かから聞こえる。



「舫離せ〜。」


近くの隊員が続けて言う。






しばらくしてから艦長が


「曳船感謝する。」


と述べる。それに続くように船務長が


「曳船、使用終わり。YT-192、曳船舫離せ。」


と、無線で連絡する。







「行進の機械を使う。両舷後進微速」


ここまでは聞こえた。そこからはスピードが上がってしまい、上手く聞き取れなかった。


唯一聞こえたのは


「とりーかーじ」


「とりーかーじ」


「取り舵15度。」


「もどーせー」


「もどーせー」


「舵中央。」


「045度ヨーソロー」


「ヨーソロー045度。」


「航海長操艦」


というだけだ。冷静になって、いつの間にか気づいたらCICに来ていた。だが、艦長と艦隊司令の姿はそこになかった。



少ししてからだろうか。突然、テレトークという古い通信機から


「研究官艦長室。」


と言う感じで呼ばれた。



何か、と急いで行くともう司令は着いている。


「おう、悪い悪い。」


「いえいえ、遅く来てしまい申し訳ありません。」


「早速だが研究官、お前うちのジジイをてなずけたんだってな。」


「い、いや、違います!」


「まぁそんなことは正直どうでもいい。・・・このしょうかくを操艦したいんだって?」


「はい。」


「・・・悪いな、今は作戦行動中だから艦長席に座って操艦はさせられないんだ。」


「はい。」


うーん、やっぱ無理だったかー。分かりきってた事だけれど。


「だから代わりに今から上で操艦する、でもいいか?」


はいー!?やっていいのかよ!!


「ありがとうございます!!」


「おう、じゃあ行くか。」


「はい!」


今は〇〇〇三。少し眠くなってきたが大丈夫だろう。













「全艦に連絡、これより、臨時操艦訓練を開始する。本艦より距離を開け。」


上に上がると艦長はすぐさま指示を出す。


「しょうかくより全艦、只今より臨時操艦訓練を開始する。本艦より距離を開け。繰り返す。只今より臨時操艦訓練を開始する。本艦より距離を開け。」


すると先程より300mほど間隔が開いた。おお、と感心していると


「当直員、研究官を次直員だと思って操舵員


変わってくれ。すぐに終わる。」


「お前は俺が言ったことを続けて言え。いいな。」


「はい!」


「了解。当直士官、操舵員変わります。」


「操舵員変わりましたって言ってから、自分の名前と階級。」


「操舵員変わりました。旭川柊、特別装備研究官。」


「両舷前進原速、赤黒なし」


「繰り返せ。」


「両舷前進原速、赤黒なし」


「進路、045」


「これも繰り返せ。」


「進路、045」


「▲◎”[♪*-◆♂ゞヾ◆▼◇§<☆★」


「繰り返せ。」


は?何言ってんの?眠気のせいか何を言っているかよく聞き取れない。


「▲◎”[♪*-◆♂ゞヾ◆▼◇§<☆★?」


とりあえず言ってみる。特に何も言われない。


「♪[<=~>``∀▽※仝⇉↔☼✡☻✈✍☾」


「繰り返せ。」


全然聞き取れない。ほんと何言ってんだ?


「♪[<=~>``∀▽※仝⇉↔☼✡☻✈✍☾」


「宜候、✍✡✈~※」


「これもだ。」


「宜候、✍✡✈~※」


「よし、好きに指示とか操艦していいぞ。」


どうしよっかな〜!!強速?最大戦速?取り舵いっぱい?まあとりあえず無難なとこから。


「両舷前進強速黒20!」


「おお、一気に飛ばすんだな?」


いきなりの指示に艦長は驚く。


「両舷前進強速黒20。」


するとすぐにグンッと引っ張られる感じがする。


「取り舵10度。」


「舵中央。」


うっひゃー!舵を好きなように動かすの楽しすぎる。



でもこれ以上他人に迷惑をかけたくないので、ここで終わりにする。


「面舵10度。」


「舵中央。」


「両舷前進原速赤黒なし。」


「両舷前進原速赤黒なし。」





「おい、もう終わりでいいのか?」


後ろから艦長が聞いてくる。


「はい、今夜中でみんな寝てますし、沢山の


人に迷惑かけたくないので。操艦させて頂き


ありがとうございました!」


「・・・よし、当直員はそのまま変わってく


れ。」


「了解です。お疲れ様でした。」


「皆さんありがとうございました!」


そう言って艦長と2人で降りて、自分の部屋に戻る。












┄┄解説及びあとがき┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

ちよだ


ちとせ型護衛空母2番艦。F-29を50機搭載。




テレトーク


実在するから調べてね。







今回は書くのに時間かかりました。赤黒の意味が合ってるか確かめたり、原速って何ktだったか確かめたり・・・・・・。


次かその次に戦闘シーン入れる予定です。


今回も読んで頂きありがとうございました!


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