第4話 人工知能搭載型攻撃イージス艦(8000t級)
室長から貰った要望書?には大きくこう書いてあった。
「人員不足の為、人員削減が容易に出来る。
何らかの原因で人の手では戦闘できない場合、自動戦闘を行う。
「こんごう」型よりステルス性を高くする。」
おお、なかなかの要望だな。
・人を減らせ。
・AIを積め。
・ステルス性を上げろ。
まとめるとこんな感じだろうか。まぁ、僕にかかればこんなのすぐに終わらせられますけどね、ハイ、
とフラグを盛大に立たせる。
ところで、ぱっとこの要望書を見て思った。
この艦、人要らなくね?全自動にすれば全部解決じゃん。
そうすれば今より小さく出来る。そして小さくできればステルス性を高くすることだって出来る。また工期を短くすることも出来る。
建造費を減らすこともできるし、人件費も抑えられる。人がいる心配をしなくても良くなる。
一隻六鳥じゃん。
もうAI積むしかないなぁ。
でも計画が潰されることも度々あるらしいので、とりあえず案を色々立てることにしましょう。
はい、上手に出来ました。
とりあえず5つの案を申請しておきました。
ざっくり説明すると、
第1案
完全無人化。AIが敵の脅威度を調査。高い順から攻撃目標の順番を割り振りして攻撃する。ステルス性がかなり高め。後々ではあるが光学迷彩を搭載予定。
第2案
9割無人化
艦長、副長、航海長、戦術長、レーダー・ソナー長、機関長以外をAIに任せる。また、AIのサポートも受けられる。自動修理機能付き。ステルス性はやや高い。1部光学迷彩機能付き。
第3案
5割無人化
第2案に見張り員、ダメージコントロール班を追加。場合によっては対潜ヘリを搭載。ステルス性はそれほど高くはない。
第4案
1割無人化
自動修理機能を付ける。ステルス性はそんな変わらない。それ以外は「こんごう」と同じ。
第5案
主砲撤去
主砲があった所にVLSを増設する。ステルス性はやや高い。
・・・と言った感じ。俺的には第1案が好きなんだけど、話し合いでどうなるのやら。室長から、
「遅くても3日後までには決めさせておくから、それまで休みでいいよー。」
と言われたので有難く休ませて貰う。最近は様々な場所に電話をかけて、赴いて、書類をまとめて大変だった。
のだが、"決めさせておく”というフレーズが頭から離れない。室長は裏でかなり大きな権限でも持っているのだろうか。…いや、あの人の事だから上層部の弱みでも握っているんだろう。
まぁ結局それは俺が室長になったらわかる事だから今気にすることではないが、と考えるのをやめる。
3日間というやや長い?休みを貰ったが、することがない。家事を手伝おうとしても真弘はしなくてもいいと言ってくるし、見るテレビはないし、寝ててもつまんないし。
いっその事艦艇関係研究官の名前を使って若泉海上防衛軍基地に行こうかと考えたけど面倒くさくてやめた。
ほんとすることがなーい。暇ひまぁ。何となくカレンダーをめくる。今日は2049年11月29日火曜日。
そんなことどうでもいいと思いつつ、何もすることがないのでペらぺらめくる。あー、日にちが経つのは早いなぁ。
なんか3日なんてすぐに過ぎそうだなぁ。
そんなことを柊は考えていた。そしてぼーっと過ごしているうちにいつの間にかすぐ3日が経つ。
早い。なんか出勤するのが辛い。だるい。でもそんなこと言ってられない。だから今日も行く。
ポエムのようなものを考えているうちに恥ずかしくなってきてしまい、そこで考えることをやめる。
…ん?研究室に入ると雰囲気が慌ただしい。
何かあったのかと心配になり、近くにいた遼に話しかける。
「おい、遼。どうかしたのか?」
「どうかどころじゃないよ!メインサーバー室のカードキーが消えたんだよ!」
「おい!それいつだ!?」
「今日だよ!」
サーバー室にはここの研究データ、最新機の設計図などが入っている。そのために警備はとても厳しく、しょうかく型同様防犯カメラやカードキー、指紋認証など様々な物を導入している。
入るために必要になる最初の物が無いとなればみんな慌てるだろう。柊も焦り始めるが、目の前にあるものに目が食いついてしまう。
「なあ遼、あそこにあるのはなんだ?」
カードキーが置いてある棚の下に、白くて薄い紙のような物が落ちている。
「カードキーあったぁ!!」
「よぉし!!」
何がよぉしだよ。こんなに大切な施設の警備はこんなんでいいのかよ。
呆れつつデスクに着く。なんかごちゃごちゃしてんな、と思って整理していると
「ごめーん
全然話し合いが終わらなくて、今日柊君に10時まで第22会議室まで来て解説して欲しいからよろしくね!加藤より♡」
という付箋が貼ってあった。この人のこういう性格には慣れたので早速説明の準備を始める。今は9時32分、10時まであと28分ある。
それを使う日が来るとは思っていなかったが、作っていて良かった。
第22会議室は向こうの庁舎の5階にある。ここもセキュリティが面倒くさいので5分前までには着けるように移動を始める。
研究室を出て、庁舎に入り、改札のようなゲートを通ってパスをエレベーターのボタンにタッチし、エレベーターに入ったらidを打ち、やっとの事で会議室前に着く。よし、5分前、と思ったら突然目の前の扉が開いた。
「柊君、入って入って!」
「はっ、はいっ!」
まだ5分前でなんの準備も出来てないのに無理やり入れられる。全くこの人は。
「艦艇関係研究官の旭川柊です。本日はよろしくお願い致します。」
ぱちぱちぱちぱち・・・・・・
気持ちのこもっていない拍手が会議室で響き渡る。
「旭川研究官は今年、河村前研究官の推薦で入室。自分が退職する際に彼を自分の跡取りとして補佐官ではなく研究官に任命しました。」
「あの河村研究官が彼を・・・・・・。」
ざわざわ・・・・・・。
河村前研究官って誰!?初めて聞いたんだけど!推薦!?なんだよそれ!!
「旭川君だったかな。早速だけど君はどの案を推しているんだい?」
「私ですか?えーっと、私は第1案の完全無人化の案を推薦します。」
「そうか・・・。理由を説明してもらえるかい?」
「はい。無人化することにより「こんごう」型攻撃イージス艦より26%小型化することが出来ます。それに伴い、ステルス性の向上、光学迷彩機能を搭載しても21%の小型化が見込まれます。
また無人化により、戦闘時に被弾、それにより機関停止、もしくは攻撃能力の無力化が確認された場合でも、攻撃を継続したり、友軍艦の盾となる事が出来ます。
そのため私はこの第1案を推しています。
・・・えー、簡単ですが、このような説明で宜しかったでしょうか。
では他に何か質問はございませんか?」
ここで1人の手が上がる。高橋康敏(たかはし やすとし)海上防衛大臣だ。
「1ついいかね。・・・・・・君は自分の作った艦が真っ先に沈んでもいいと思っているのか?」
大臣を見つめて即答する。
「研究官としては構わない、と申し上げます。しかし私という一般人では、そう思いません。」
その回答に驚いたような顔をしながら、また質問する。
「研究官として、とはどういう意味かね。」
「はい。紛争、もしくは戦争が発生するまでに、戦力となる艦艇を作ることが艦艇関係研究官という仕事です。私の作った無人艦という新たな兵器が有人艦を護ったり、敵を壊滅させられることが出来るのであれば艦も私も本望です。」
「そうか・・・・・・。では一個人としてはどう考える?」
「一個人としては沈んで欲しくはありません。言ってはなんですがこの艦は私のデビュー作であり、息子のような存在でもあります。もし皆さんが私の立場だった時にそんな艦が沈んでも構わないと思えますか? …と言う回答で大丈夫でしょうか。」
小さい声で、
「デビュー作とはなんだ!」
「素晴らしいには素晴らしいが・・・・・・。どうするべきだろうか・・・。」
などという声が聞こえてきた。それを断ち切るかのようにバンッ!海上防衛大臣が勢いよく立ち上がる。
「いいじゃないか諸君。これで行こう。とても分かりやすく豪快な説明、とても気に入ったよ 。君の"次回作”にも期待するとしよう。頑張ってくれたまえ。」
「…はい、ありがとうございました!」
研究室の休憩所で彼らは話していた。
「柊君、ほんとに豪快な説明だったね。」
「そうですか?そこまででは無いと思うんですが。」
「いやぁー、聞いてたこっちは凄かったよ。」
「はぁ。」
普通に説明したつもりが結構喧嘩腰で言っていたようだ。反省反省。
「次も今日みたいな感じで頑張ってね!」
「ていうか室長!突然過ぎてビックリしたんですけど!」
「ごめんごめん!まぁそういう時もあるって!」
あなたはいつもそうだろう。そう口から出そうになるが、あえてそれは言わないでおく。
今日はとても疲れた。早く休むとしよう。
┄┄解説とあとがき┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
真弘(まひろ)
柊の妻。最近の趣味は柴犬(家で飼っている。名前はマサヒロ。)の写真をSNSに上げること。とても可愛い。
次もこっちです!!楽しみにしててね!!
読んで頂きありがとうございました!!
なんとなくでもいいので!応援とか星、フォロー、よろしくお願い致します!!
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