第30話 真っ白い

「双子、勉強教えて」


 土曜の朝、問題集と参考書を抱えて双子の部屋までやって来た神那を見て、双子は面喰らった顔をした。


「そんなに難しい課題出てたっけ?」

「自主勉だよ。十二月の定期テストでいい点取りたいんだよ」

「どうしてまた急に」

「神那ちゃんの成績なら志望大学余裕のストレートで入れるじゃん」

「その志望大学を変えようと思って」


 神那は決意したのだ。

 高校を出たら別々の道を行こうとしている双子に倣って神那も自分の将来をもっとよく考えることに決めた。安直に、家から通えるから、合格ボーダーを超えていてもう勉強しなくても入れるから、ではなく、神那もすべてを白紙に戻して何をしたいか模索したいと思ったのだ。


 自分たちの目の前には、まっさらな未来が待っている。


「私も東京の大学に行くかもしれない。いろんな大学のオープンキャンパスに行ってみて、資料請求したりネットで検索するなりして、もっと真面目に進学先を考えることにしたんだよ」


 問題集を、強く、強く、抱き締める。


「だから――選択肢を増やすために。もっと勉強しなきゃ、って」


 双子が顔を見合わせた。

 次の時、神那の方を向いて、二人揃って微笑んだ。


「もし神那ちゃんが東京の大学に行くならさ」

「三人で暮らそうよ」

「三人でひとつの家を借りてルームシェア」

「ね、いいでしょ?」


 神那は大きく頷いた。


「それいいね! 楽しそう!」


 まっさらな未来が、自分たちの目の前にはある。


 もっと大きく羽ばたこう。









<おわり>






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となりの双子ちゃん。 日崎アユム/丹羽夏子 @shahexorshid

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