こもり その4

 結論から言えば胡宵に怒られた。

 曰く、こども相手に本気で嫉妬しない、と。俺としてはこどもと言えどルゥは男で自分と同じ人ならざるものなので、早めに芽を摘んでおくにこしたことはない。と、言い訳はしなかった。してしまえば本当に大人げないし、1番笑われたくないアルバに笑われてしまう。


「ひな、しらなかったの?」

「う、うん…」


 夜。ルゥを寝かしつける為に3人でベッドに居る。昼間に寝ることが多い上、胡宵とも寝る為にそこそこ大きく質のいいものを使っているので3人で横になっても多少余裕がある。


「パパもママのそこ、がぶってしておよめさんにしたんだって」

「だからあの時ルゥ、赤くなってたんだ…」

「ひな、えりにぃのおよめさん」

「そう、俺のお嫁さん」


 ライカンは狼の性質が強ければ強い程、番になった相手しか好きにならないと聞いたことがある。念には念をだ。

 ぽんぽんとルゥの頭を撫でてやると嬉しそうにへにゃっと笑う。


「なんだか、えりにぃとひな、パパとママみたい」

「俺がママ?」

「うん。ママはねやさしくて、いいにおい!」

「確かに、胡宵は優しいしいい匂いがする」

「も、もう…ルゥ、寝るよ。夜ふかしするとおばけに食べられるんだからね」

「おばけやだあ」


 胡宵が少し照れているのか頬をほんのり赤く染めているのに気付くとクスッと笑ってしまい、睨まれる。正直、可愛いとしか思えないなんて言ったら多分怒られる、そう思いながらルゥに布団を掛けてやった。おばけが来ないか俺や胡宵に確認すると、安心したのか少しウトウトし始める。


「おやすみ、ルゥ」

「ん…おや、すみ…なさぁい…」

「いい夢、見てね」


 ぽんぽんと撫でてやりながら額にキスをする胡宵は確かに母親の様だった。少しするとルゥは規則正しい寝息を立て始めたので俺と胡宵はルゥを起こさないように静かにリビングに移動した。


「胡宵、おいで」

「ん」


 ソファに座った俺は胡宵を抱きしめる。今日は1日こうして引っ付いているつもりだったけど、予定外のことだらけで夜までお預けだったのだ。


「ルゥ、明日帰るのかな」

「多分ね。俺としては胡宵とはやく二人きりになりたい」

「エリ、ヤキモチ妬いてたもんね」

「そりゃ、ね。狼は番になったら添い遂げる生き物って聞いたことがあるから」

「こどもなのに?」

「人間より成長がはやいからあっという間に大人になるよ」

「ふぅん」


 胡宵のサラサラとした髪を撫でながら、今は俺と二人なので他の奴のことを考えてほしくないな、と口にしようとしてやめた。流石にこれは大人げないし。


「俺、子守って初めてしたな」

「そうなの?」

「エリは?なんか慣れてる感じしてたけど」

「俺はほら、弟とか妹とかにあたるのがたくさんいるから。兄弟の殆どは子守経験あるかなぁ」

「なるほど…俺は一人っ子だから余計にないなぁ。従兄弟でも下の方だし」


 エリはお兄ちゃんなんだね、とこちらを見ながら言われて少し照れくさくなる。

 夜はまだまだ始まったばかりだ。

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