こもり その2
今日は昼頃にたしか胡宵が来てくれるのだった、と思いだして寝室から出ると、玄関で物音がしているのに気づく。タイミングがいいな、とはやる気持ちを抑えながら玄関に向かう。
「胡宵、いらっしゃ…」
玄関には恋人がこどもを抱いてこちらを見ていた。こどもが人間ならまだ胡宵の親戚かな、とか思えたのだが、抱かれていたのは狼の耳と尻尾の生えた恐らくライカンのこども。
思わず固まってしまった俺を見て、胡宵は慌てたように近くに来た。
「びっくりさせちゃった…?」
「あ、いや…ライカンのこどもを胡宵が抱いてるから…」
「アルバさんとさっき会ってね、エリに預かってほしいって。アウロラさんと急用ができたとかで。」
「なんか、電話鳴ってたのそれかな…とりあえず、リビングに行こう。その子になにか食べさせないと…」
二人をリビングに連れていくと胡宵は昼食の準備をするからと俺にこどもを渡してキッチンへ行ってしまう。こどもをだっこするのは弟や妹の世話以来で、長いことしていなかったせいか少しぎこちなく抱いてしまった。リビングのソファに腰を下ろし、こどもを膝に乗せてやるとこどもは興味深そうに俺のニオイを嗅ぐ。
「えりにぃ…?」
「俺のことは知ってるんだ…お前の名前は?いくつ?」
「ルゥ…ごさい」
「ルゥ、ね。アルバが迎えに来るまでは一緒だからよろしく」
「よろ、しく…ひなも、いっしょ…?」
少しおとなしい気質のルゥは恐る恐るというように俺に質問した。どうやら自分より胡宵によく懐いているようで、少しモヤモヤとしたものを胸に感じた。
「多分。今日は泊まるって言ってたし…」
「ひな、いっしょ…!」
懐いているというか、惚れているのでは?なんてこども相手に思ってしまう。確かに、胡宵は可愛いし面倒見もいいから好きになるのは分かるけど、でも。
「胡宵は俺のだからね」
「?」
きょとんとするルゥの頬を暫くむにむにと弄っていると、キッチンから昼食が出来たと声を掛けられた。
こども相手に嫉妬なんて、アルバには絶対知られないようにしなければ、とルゥを連れて食卓に向かう。メニューはオムライスだった。
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