新月の日 おやたちのはなし
閑話休題。エリの吸血鬼としての親の話。
人里離れた所にある古びた館に二人の吸血鬼が住んでいる。一人は30代半ば程の美しい男で、もう一人は中性的な見た目をしている。前者はアルバ、始祖や真祖と呼ばれる類の吸血鬼だ。後者はアウロラ、アルバの妻でありエリの母親役の吸血鬼で古くから存在している吸血鬼の一人。
「アルバ、アルバ」
アウロラが天蓋付きのベッドから夫であるアルバを呼ぶ。アウロラの声はそんなに大きなものでは無かったがアルバはすぐにベッドの側に現れた。
「アウロラ、どうしたんだい?」
「胸騒ぎがする。子どもの誰かがやらかしてる」
「アインスはこの間、人間に保護されて療養してる所だし…リヒトは奥さんの方がやらかしそうだし…どの子だろうねぇ」
「んん…月は、のぼってるか」
「月?」
気怠そうにアウロラが窓の外を指させばアルバは外を見る。外を、空を見たアルバはすぐに誰がやらかしているのかを察したのか頭をおさえる。
「エリだよ、きっとそうだ。今日は月が昇らない日だから」
「エリ、大丈夫だろうか」
「普段いい子なだけにきっとへこむよ。心配かい?」
「ん、心配に決まってるだろ」
「それなら、見に行ってみようか」
そうアルバが言えばアウロラは首を横に振る。
「エリ自身で何とかしないと意味がない」
「ふふ」
「何がおかしい…笑うな」
「いや、君がしっかり母親をしているなって。そうだよねぇ、君は何百年も母親として子供を見守ってるものね」
「お前だってそうだろう」
アウロラがそう言うと枕を抱き締めながら横になる。アルバは可愛いなぁと呟きながらベッドに腰掛けてアウロラに口付けをした。
「きっとどうにかなるだろうさ。私達の可愛い息子だもの」
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