新月の日 その3


 がぶりと首筋に牙を刺すように噛み付けば、白い首筋に赤い血がでてくる。恋人の、胡宵の血は自分の体に合うのか、ただ単に今日が新月で体が血を欲しているからかとても美味しく感じた。


「ん…っ…えり…」


 胡宵が自分の肩を押して抵抗しているのを感じたけど、ぎゅっと抱き締めてそのまま血を吸う。まだ堪能していたい。いつもならキスなんかで満足するけど今日は止められない。ああ、少し汗もかいてるみたいだと首筋を舐めると胡宵は小さな声を漏らしながら腕の中でピクッと震えていた。


「胡宵、おいしいよ」

「えりぃ…」

「もうちょっと、飲ませて…ね、お願い」

「あと、すこしね…」


 血を吸われると気持ちいいからちょっと苦手、なんて言ってたっけ、とか思いながら胡宵の唇に触れるだけのキスをする。あと少し、あと少しと首筋に顔を埋めて血を吸う。


 ただ、あと少しをやめられるだけの理性がこの日に限ってなかったのがいけなかった。


「ん…っ…」


 気が付くとくったりと自分に凭れ掛かる青白い顔をした胡宵がいた。しまった、と思ったときには遅く、血を吸い過ぎたが為に貧血になり意識が少し朦朧としかかっていた。

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