こもり その1


「あ、ヒナちゃん。」


 エリの家に行く途中、小さな男の子をだっこしているアルバさんが居た。男の子には小さいながらもふわふわとした狼の耳と尻尾らしきものが生えており、尻尾はパタパタと振られている。


「アルバさん、こんにちは。その子、どうしたんです?新しいエリの弟ですか?」

「違う違う。私の友人の子なんだけどねぇ、預かることになって。でもちょっと私もアウロラも出掛けなくちゃいけないからエリに見てもらおうと思って」

「へぇ…」


 どんな子だろう、と気になって見ていると男の子が少しこちらを見てはにかんだように笑い、アルバさんの胸に顔を埋めてしまった。そんな仕草も可愛く見えてつい笑ってしまう。


「もしよかったら俺が連れていきますよ。その子さえ良ければですけど」

「そうしてくれると有り難いねぇ。ルゥ、ヒナちゃんとエリのところに行ける?」

「ん…」


 アルバさんの問いかけに答えるように頷くと、ルゥと呼ばれた男の子はこちらに腕を広げる。おそらく、抱っこをして運んでほしいのだろう。そう思った俺はアルバさんからその子を渡してもらい、抱き上げる。

 その子はだっこされるとくんくんと首筋の匂いを嗅いでから甘えるように頬ずりをした。少し、擽ったい。


「その子、だっこが好きなだけで歩けるからね。名前はルゥ。人が食べられるものなら割と何でも食べるから」

「わかりました。じゃあ、気をつけて。アウロラさんにもよろしくお伝えください」

「ある、ばいばい?」

「また迎えに来るから、それまでいい子にしてなさいね。じゃあいってきます」


 アルバさんはそう言うと俺とルゥの頬に口づけてから飛んで行ってしまった。

 ルゥはアルバさんに手を振ってから俺を見て、またはにかむ。照れ屋さんなのかなぁ、と思いながらエリの家に向かう。エリはびっくりするだろうか、それとも。


「卒倒しないといいんだけど、ね」

「ぅ?」

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