エリといっしょ

冬月春花

新月の日 その1

 恋人は吸血鬼だった。見た目は普通に綺麗な男だし、ちょっと八重歯が鋭いくらいの美形。触れれば壊れそうな見た目なのに体はがっしりとしている。本当に人間にしか見えないのに吸血鬼らしい。


「あー、ぽかりおいひい…生き返る…」

「また食べなかっただろ。ほら、これも食え」

「んん…ワイン苦手だからやだ。アルコール飛ばしても無理」

「だからってポカリ飲んでるだけじゃ腹満たせないだろう」

「むぅ」


 吸血鬼なのに血はあまり吸わないらしい。昼間の外出も日傘があれば出来るし。血じゃなくても体液の摂取で生きていけるからってんで毎日キスはしてる。それはもうちゅっちゅっと。

 血を吸わないのは体質的に合わないとかなんとか。涙はしょっぱくてちょっと美味しいらしい。唾液と精液は甘く感じるとか言ってるのを聞いてちょっと引いた。精液は苦いだろ。


「今月は泊まり込みある?」

「あったけど無くなったから泊まる。どうせポカリで済ませるつもりだったろうから徹底的に食育してやる」

「手料理は嬉しいけど、新月の日はちょっと」

「は?」

「いや、昼間はいいんだけど夜はその…」

「まあ、昼に夜の分も一緒に持ってきてやるからそれ食べろよ」

「ありがとう…」


 恋人は何かを隠すようにキスをし始めた。

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