新月の日 その4


 手に温もりを感じる。なんかふわふわしてる感じもしてる。瞼が重いなぁ、なんて思いながら目を開けるとエリの寝室だった。先程まで自分はエリに血を吸われていたのでは?、と思って手の方を見ると心配そうな顔をしているエリがいた。


「えり」

「胡宵、気分はどう?気持ち悪かったりしない?」

「ふわふわする…献血のあとみたいな」

「ごめんね、ごめんなさい。俺が、悪い」

「エリ、なかないで」


 ぽろぽろと涙をこぼすエリに慌てて起き上がろうとするけど、体が重くかなわなかった。


「俺が、胡宵の血を、おれ…」

「うん」

「我慢できなくて、気がついたら、胡宵、たおれちゃって」

「何となく、分かったから…ね、泣かないで?」

「うぅ」


 ぐずぐずと泣きながら頷くエリ。

 何となく分かったとは言ったものの、実際には本当のことは理解していない。でもエリが自分から話したいって思ったときに話してもらわないといけないことだと思った。


「エリ、そんなに泣いたら目が溶けちゃうよ」

「こよい、そばにいて」

「おじいちゃんになってもそばにいるよ」

「ん」

「もう朝になっちゃうけど、一緒に寝てくれる?」

「胡宵」

「なぁに」


 エリが隣で横になり、俺を抱きしめると甘えるように俺を呼ぶ。


「あいしてる」

「俺も」

「おやすみ、胡宵」

「おやすみ、エリ」


 エリが寝息をたて始めたのを見守っていると、カーテンの隙間から少し陽の光が漏れていた。ああ、朝かと思いながら目を瞑れば、眠くなってきた。

 起きたらエリと近くのカフェにでもご飯食べに行こうかなとか、その前に目を冷やしてあげないととか考えている内に自分も眠りに落ちてしまう。


 初めて一緒に過ごした新月の日はこうして終わったのだった。


─新月の日 おわり─

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