17日深夜より18日 使命
「はい?」
「だから、アナタにはパークを救ってもらいたいの」
何?
いつからこの小説は異世界転載ものになったの?
「す、救うって…何を?どうやって?」
「この島は25日に全て崩壊するわ」
意味がわからん。
何にも起きてないじゃないか。
「何でですか?大地震でも崩れなそうなのに」
「…この島はサンドスターでできているの」
憂うようにオイナリサマが手を組む。
「サンドスターは意識を繋ぎ止めるだけの媒体に過ぎないわ…でもそれってどこから来たのかしら?」
「さぁ?宇宙とかですかね?」
キッと睨まれた。
目が少し細いのでさらに怖い。
「元々、それは無だったものなのよ。だけどそこに無理矢理に光と影を作ってバランスを保ったの」
そういえば、中学校はキリスト教の学校だった。
旧約聖書で神は初めに光と闇を作ったって言っていたような気がする。
「そのサンドスターに意識が入り込むことでその形を保つの。それがなければただの輝きのまま」
「じゃあ土とか水とかは?」
「ガイアの意志よ」キッパリ
「ごめん、ついてけないわ」
「ちょっと!」
出口を探そうと思い、踏み出した時に床の紫色の光に気がつく。
濃い紫の点はやがて濁り、暗くなり、ホコリのように消えていった。
「まずい…もう崩壊が始まっている…見なさい」
オイナリサマが壁に投影する。
森の中に真四角にえぐられた跡ができている。
10×8メートルくらいだろうか。
「フレンズ、島はおろかセルリアンさえ自然の法則は見逃してはくれないのよ」
「…あのさぁ…何で俺なの?勉強も出来ないただのサッカー少年なんですけど」
島を救えって言われても具体的にどうなのよ。
しかも何故俺なの?
「アナタを愛する人も少ないし、ましてやアナタが愛する人なんていないからよ」
はいカッチーン。
「はぁ?なんですか?俺が非リアだからって理由でそんな面倒な事を押しつけられるワケ?付き合ってらんねーよ!」
「まちなさい!」
冗談じゃあないぞ、そんな事で俺の快眠を妨げるなんて許せない。
オイナリサマが指を鳴らすと、なぜか俺は彼女の前に立っていた。
「いい?アナタは私の許可がなければここからは出られないのよ?」
「…じゃあ俺が起きたら?」
「ちょっ、やめな
「ふぁぁあぁぁぁあああっ…」
クソッタレの夢から覚めた。
唯一の救いは体だけは回復している事だろうか。
父さんも母さんもどっかに行ってしまった。
牛乳とトーストだけが置いてある。
「今は…10時20分?!?!」
ふざけんなあのクソギツネ大遅刻じゃねーか。
…だがもうこの時間だし行く気も起きない。
たまには部活も休んで家でまったりするのも悪くはあるまいよ。
録画されている映画でも見て、あとは親に嘘ついておけばいいだろう。
「私、アナタが好き!」
「俺もだ!いっしょに帰ろう!」
よくある終盤の恋愛キス、ハグシーンだ。
あまりにありふれているのにどうしてこんなにも多くの人の心を揺さぶるのか俺には理解ができない。
『アナタを愛する人も少ないし、ましてやアナタが愛する人なんていないからよ』
まだあの言葉が忘れられていない。
俺の何が悪いっていうんだろう。
好きなのと愛してるって何が違うのか、俺には正直言って全く分からない。
…まあこうしてポテチ片手にくつろいでいて不満はないわけだが。
やっぱし女の子と手を繋いでたりするリア充どもが少し羨ましい気持ちもあるが、でも自分じゃ無理だと思っている。
サッカーだったらこうすぐには諦めないのにな。
「明日は遅れずに学校行けよ」
「あー。おやすみ」
生返事で返す。
と言っても、睡眠はあまり気がすすまない。
寝るとあのクソギツネにエンカする可能性が高い。
と言っておきながらもやはり眠気には抗えない。
三時を過ぎれば何とか今あるエナジードリンクでオール出来るかもしれないがまだ2時だ。
ぐーたらして疲れていないのに眠いのはよくある。
ちょっと。
ちょーっとだけ目をつぶるくらいなら…
「くそったれ」
またあの道に出た。
今日はいつにも増して風が強く、ダウンを着ているのに凍える。
なんで夢の中でもこんな思いをしなければならないのか?
とりまあのキツネから逃げなければいけない。
今日はいつもと逆の林の中に行ってみようと思う。
「へっくしょい!」
木々で風はある程度遮られるとはいえ、体の芯まで凍りつくような寒さだ。
不思議な感じがする。
ここは日本国領土だと学校では教わった。
でも生えている木などを眺めているとあたかも自分がアラスカやカナダのタイガにいるような気になってくる。
まるで違う国だ。
こんなに素敵な場所が消えるなんて微塵も思えない。
息が白く濁り、睫毛に霜が降りているのに気づく。
本当に寒くなってきた。
日本の都会で使われるダウンではこの寒さは防げないのだろう。
かと言って迂闊に建物に入ることもできない…
「…ん?」
2、3本奥の木にモフモフしたベージュ色の物体が見えている。
ケサランパサラン的な?
好奇心から近づいて見に行く。
「な、なんじゃこりゃぁぁあ?!」
そこには顔色を悪くしたドールが横たわっていた。
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