一つ一つの言葉の欠片が心地よい

読み始めて、その筆力の安定、高さにびっくりした。
人生の喜怒哀楽、感情の襞、何より知識の豊富さが、作品の物語性を阻害することなくさらりと書き込んである。読んでいると上等のお酒に酩酊するようだ。
こんなにも知識に溢れ、かつ、それが活き活きと躍動している作品を他に知らない。実際の土地などに着目して、緻密にしなやかに落とし込まれる蘊蓄は快いの一言に尽きる。
一つ一つの言葉の欠片が、私の心に湧水となって生じ、それがとても心地よい。

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