第5話 神々の会話

急な招集がかかり大会議室に呼ばれた。


「皆、集まったか?」

「一部、緊急の仕事で集まっていませんが、会議を進めてもかまいませんよ。」

「そうか・・では、始めよう。」


隅の席に座った私は、オルリという。

種の起源を探求している科学者である。

隣の席に不機嫌に座っているのは同僚のカイリだ。


カイリは宇宙創成のカリスマともいえる科学者だ。

歳は私と同じである。

彼は寝ているところを会議に呼ばれ起こされたらしい。

ここ数年多忙で、やっと数年ぶりに寝たところを起こされ、

絶賛不機嫌中である。


議長は空間管理委員会の委員長であり、本アカデミーの学長でもある。

その議長の招集となれば、空間実験の許可が下りたのだろう。

長かったよな、許可が下りるまでが・・遠い目をして物思いにふける。


議長が話し始める。

「今日の議題だが、無空間の使用について報告する。

 それでは副議長、説明を。」


「はい。

 新規作成された無空間をどのグループが使用するかを役職者が吟味しました。

 その結果、候補が3つに絞られました。

 これらは競合する研究ではないので、3つのグループに使用許可が下りました。」


 おお~、と、議場に期待の声が響く。


 「では、グループ名を発表します。

  宇宙創成、

  種の起源、

  宇宙の終焉

  以上のグループです。」


 「意義あり!」


  意義を唱えたのは、私と犬猿の仲のリードだ。

  何が気にくわないのか、私への敵対心が強い。

  私への嫌がらせや、迷惑行為をするのに執着している。

  そんな事より自分の研究に没頭した方がいいのに、と思う。


 「なんでしょうか?」

 「種の起源なんて重要性を感じません。

  それより、私の恒星エネルギーの方が重要だと主張します。」


 「恒星エネルギーは確かに重要な課題です。」

 「ですよね、そのため・」

 「ですが、無空間は必要ですか?」

 「ぐっ・・、無空間でも実験できます。」

 「無空間を必要としているグループを排除してでも必要だと?」

 「いえ、そういう意味でなく、種の起源より重要性があります。」


 「カイリさん、恒星エネルギーの方がよろしいですか?」

 「宇宙創成の実験と恒星エネルギーの共存はできません。」


 「いや、できるでしょう? 創生した恒星にすこし手を加えさせて・」

 「馬鹿にしてますか?私を。」

 「いえ、そんな、カイリさんを馬鹿になんて・・」

 「宇宙創生は、創生の課程と影響を調べるんですよ?」

 「はい、ですから・・」

 「よく聞きなさい!」

 「あ、・・済みません・・」

 「創生した宇宙で自然発生した恒星に手を加えてどうすんですか!」

 「でも・・」

 「馬鹿ですか、あなたは。

  創生した宇宙をありのままに観察する研究ですよ!」

 「あ・」

 「副議長、以上です。」


 「待って下さい! 種の起源も同じでしょう!」

 「どうしてですか?」

 「種を発生させ、宇宙開発をしたら宇宙の創生が崩れます。」

 「はぃ? どうしてですか?」

 「種が知恵を得て、宇宙開発を始めたら創生に影響を与えます。」

 「それがどうかしましたか?」

 「創生をテーマにしているのに破壊要素が入るんですよ!」


 「宇宙が創生されれば生命が産まれますよ。」

 「うっ!・・しかし・・」

 「産まれた生命が宇宙に飛び出すのもまた自然です。」

 「・・・」

 「その生命が宇宙に干渉するのもまた創生の一連です。」

 「でしたら恒星エネ・」

 「惑星に私達が手を加えるのは創生ではなくなります。」

 「・・・」

 「以上です。副議長。」


 「では、他にご意見は?」

  ・・・・


 「無いようですね、では、次の議題に移ります。」

   :

   :


 まあ、このような感じで私の研究ができることとなった。

 

 会議が終わり出席者が各々席を立ち始めた。

 私が席を立つとリードが凄い形相で睨みつけ通っていった。

 そのとき、わざとだろう肩を当てていった。


 ふ~・・と、ため息をつく。

 カイリが話しかけてきた。

 「よお!」

 「お、カイリ、ありがとう。」

 「何がだ?」

 「いや、種の起源をフォローしてくれて。」

 「んなの理の通りじゃん。当たり前のことを言っただけだ。」

 「まあ、そうなんだけどさ・・」

 「あいつのことは気にすんな、それにしても酷いな。」

 「・・・なんで何だろうね。」

 「さあね、知りたくもないよ。」

 「だよね・・」

 「さて、すこし打ち合わせをしよう!」

 「うん。」


 「おい! テット!」

 「なんだい、カイリ?」

 「宇宙の終焉は、まだ先の話だから、話し合いは、まだいいだろう?」

 「ああ、当面はいいや。」

 「じゃあ、オルリと話してくるよ。」

 「わかった。結果だけ教えてくれ。」

 「あいよ、じゃあな。」


 こうして無空間での実験をすることとなった。

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