第9話 生命の進化

そう、まだ意識といわれる物はもっていなかった。

自分が何時、何故、此処にいるのかも分からない。


海の中でプカプカと漂うことしかできない。

時々、なにかが口に入ってくる。

そうするとお腹が張る。理由は分からない。

そして暫くすると、お腹がへこむ。

それの繰り替えしだった。


そして、なんとなく上には暖かく明るいものがあり、周期的に暗くなる。

何回かそれを見ていると、激痛が走り、体が二つに分かれる。

おや、と思うと、分かれた方も、おや?と、思っているような気がする。


やがて、この分裂というものを何度も繰り返し、やがて朽ち果てた。


そして分裂した仲間は莫大な数になっていた。


ある日、仲間の一つが分裂したら毛のような物を1本もっていた。

それを動かして移動している。

いいな、それ・・・


そう思っていると、そのような仲間がどんどん増えていく。

それをうらやましく思っているうちに朽ち果てた。


そしてさらに長い年月をかけ大きな生物が現れた。

自由に泳ぎ移動できるものが・・

あるものは海水を吐き出し、あるものは尾びれを使って。

やがて、足というものを得て陸に侵出していった。


そして何億年たったのだろうか・・

恐竜と呼ばれていた巨大生物が絶滅した後、

人という生物が繁殖していた。

残念ながら古代の進化の記憶を持っていないようだ。


洞窟を住処とし、マンモスなどを狩猟していた。

ネアンデルタール人である。

性格は温厚で、狩猟を生業として集団生活をしていた。


ある一人が狩りをしようと洞窟を出たときだった。

目の前に透明な人間が現れた。

透明だった人間は、徐々にはっきりと見えるようになった。

ネアンデルタール人は恐怖に戦いた・・・

悪霊ではないか?


震えるネアンデルタール人は、さらに驚愕する。

悪霊が何をしたいのか、頭の中にイメージで伝えてきた。

この頃はネアンデルタール人は言葉を持っていなかった。

コミュニケーションは目線、身振りなどだった。


恐ろしさに、思わず槍を悪霊に投げた。

槍は、悪霊の前で空中に静止し、そして地面に落ちた。

膝が震え、恐怖から思わず跪く。

持っている食料を捧げ、悪霊を鎮めようとする。

しかし悪霊は食料を受け取らず、頭の中に再度語りかけてきた。


悪霊は、自分はオルリだと言った。

恐れることはない、自分は創造主だと言う。

そして私達が何時からどのように狩りを覚え、火を覚えたか聞いてきた。

素直に長老の昔話、語り部が語った話を伝えた。

それを聞くと、創造主は考え込んでいた。

ボソリと”進化の途中か?”という呟きが伝わってきた。

意味が理解できず、ただただ、畏怖で崇め続けた。


暫くすると突然、頭痛に襲われた。

もがき苦しんだ末、気を失った。

目が覚めると、言葉、絵、文字という概念があった。

なぜかこれらが理解できた。

創造主は、生活を文字や絵で残すように啓示した。

そして、創造主は透明になって消えた。


ネアンデルタール人は、創造主という概念が分からなかった。

悪霊ではなく、人の生死に関与する偉大な精霊だと考えた。

そして、皆に言葉、絵、文字の概念を教えた。

やがて言葉が確立し、絵も描けるようになった。

それからは、洞窟に絵を描き生活の様子を残し続けた。

やがて氷河期が訪れる。

そしてネアンデルタール人は知ることとなる。

創造主の言い伝えにあった進化という言葉の意味を。

そう、進化した人間が現れたのだ。


そして時は流れた。

アトランティスという国が勃興した。

神の名前はオルリと言った。

ただ、恐れ多いので名前を声に出すことはない。

ポセイドンと呼ばせていただいている。


神は、種の起源という難しい一説を唱え、理解できない内容を言う。

よく分からないが、人間から進化しないことを憂いているようだ。

そのため、技術というものを与えて下さった。

なんでも脳に変化を及ぼすと、種の亜種が発生するとか・・・

そのため農業と、航海技術、医術というものを教えてくださった。

そして神は、空の世界から見守るとおっしゃって消えた。

私達は、これらの技術を応用し、さらに高度な文明を築いていった。

そして、愚かにも内紛を起こし大陸ごと消える末路をたどった。


それから時が過ぎた・・・

今は20世紀と呼ばれている。

人はピラミッド構造ヒエラルキーの社会で暮らしている。

一部の人間が富みを独占し、それを維持するため戦争を行っている。

そして、自分達が生み出す技術に酔いしれ、自然を顧みなくなった。


しかし、アトランティスの時代から人間の脳、体系は変化することがなかった。

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