第10話 宇宙の終焉

テットは、カイルとオルリから研究はもう少しで終わると報告を受けた。


とはいえ、テットが宇宙の終焉を実験し観察するには、まだ早い。

自分の研究は佳境に入っていないので比較的暇だった。

そのため、オルリから聞いた実験惑星に興味を持ち来てみた。


降りた惑星は、そこの生物によると地球と呼んでいた。

オルリによると、ここの生物は宗教なる思想を生みだしたらしい。

そして、人間という生物がこの星を支配しているようだ。


テットは、アメリカという場所にいた。

別にアメリカという国に降りたかったのではない。

たまたま降りたらアメリカだった。


そして、その地を俯瞰して見ていたら変わった人間がいた。

建物の中で黒ずくめで何かをしている。

どうやら秘密結社とかいうもので悪魔崇拝をしているらしい。

悪魔って何だ? 言っている意味はわからない。

興味を引かれその儀式を見ていた。


実験生物(人間)からテットは見えないし触れない。

テットとしても実験生物に接触する気はない。

接触したらオルリに怒られるからである。


儀式を見ていて、テットは呆れた。

人類が悪魔によって壊滅的な状態になることを、人類は望んでいるのだろうか?

そして、悪魔なるものが世界を支配するのが希望なのだろうか?

その時に、ここにいる人間だけが悪魔と共存できると信じている・・・?

それを終末の世界と言っているようだが・・


うん、よく分からん・・・

まあ、私の実験が始まれば、確かにこの空間に終末が来ることは間違いない。

しかし、悪魔なんて終末に支配しないし、終末は全てが無に帰るだけなんだが・・

ただ、終末になるのは人間からみるとだいぶ先だ。


それにしても、ここの文明はどうなっているのだろうか?

カイルが生成したこの惑星は地下資源が豊富だったはずだ。

そしてオルリは古代の生物が作った油も十分にあると言っていた。

それならとっくに宇宙に出ているはずなんだけど、と首をかしげる。


十分な資源があったのに、無為に資源を消費しているだけである。

これでは、この惑星から出ることが出来なくなる。

まあ、この惑星に他の惑星の生物が入り込んで操作していることもあるが・・・

それにしても、これらに気がつかず何も考えていないで生きている生物も珍しい。

他の惑星から来た生物に気がつきもせずに、こき使われているのも納得できる、か・・。


ここの文明で、興味を引いたのは、神なる宗教だ。

まあ、過去にオルリが調査に赴き、人間から神として認識されたようだ。

それがギリシャ神話や、キリスト教、仏教などに受け継がれ神格化しているらしい。


自分達は確かに、この惑星を作成したから神と言えるだろう。

でも、人間達に願い事を言われても聞く気もないし、かなえる謂われも無い。

ましてやキリスト教のように勝手に契約をしたようなことを言われても困る。

不思議な生き物だと思う。


ただ、その宗教の中で面白いいものがあった。

なんでも日本で昔多く信仰されていた神道は、万物に神が宿るというものだ。

土地は神様のもので、人は神の土地を借りるもの。だから地鎮祭などを行うらしい。

水には水の神がいて、人には畏怖の対象であり恵みもすれば奪いもする。

同じように、そこかしこに神がいて、萬の神というらしい。


そういう宗教があったのに、今では神をないがしろにする。

山を力ずくで崩し、川を汚染し、護岸工事などで自然を壊す。

そのくせ、神には自分の願望をお願いをするだけだ。

面白い生物である。


ただ、不思議なのは生物間同士で会話ができない。

人間と猫、ライオンとカバなど、会話ができないのだ。

他の惑星ではできているというのに。


まあ、このあたりはオルリが調査をし報告書にあったが理由に興味はない。

ただ、出来るか出来ないかだけだろうに。

そういうとオルリは怒るだろうな・・・


それからオルリが首をかしげていたのは人間に進化が見られないことだ。

オルリ曰く、すでに人間から進化した生物が現れていけなければおかしいらしい。


オルリと言えば・・・

そうだ、オルリを目の敵にしているリードの件はどうなったのだろうか?

前の会議で却下されたはずなのに、最近またリードがしつこくカイルに媚びを売っていた。

なんでも、この無空間の1つで恒星エネルギーの短期回収実験をやらせてくれと。


1個くらい恒星がおかしくなり1つの銀河が崩壊してもいいじゃないかと食い下がっていたな・・

その実験は太陽という名の恒星を短期回収のターゲットにしたいと。

これを行うと地球がある太陽系とかいう小集団は壊滅するそうだ。

まあ、たいした規模じゃないから、カイルがどう判断するかだな。

うるさいリードを黙らせるため、貸しとして同意するか、

それともオルリの関与した惑星なので、当初通り却下するかだ・・・


まあ、もしリードの実験を許したら地球の生物は全滅する。

地球にとっては、はた迷惑なリードということになる。

地球でいう悪魔に相当するのかな。

まあ、リードは、崇拝されても人間を助けないだろうな。

そういう意味では、悪魔信仰をした人は残念な生物だね。


さてさて、そろそろ実験室に戻って、宇宙の終焉実験の準備に戻ろうか。

そういうと、テットは透明になっていき、やがて消えた。

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