第7話 オルリ

カイリは、そろそろ星が安定してきたと言っていたけど・・


自分の研究室で、カイリの報告書に目を通す。

カイリも不眠不休で頑張っていたよな・・・

俺も人のことは言えんけどさ・・


やっと今できた生物の種を、ふと見る。

やり遂げた高揚感が、ふつふつと湧き上がる。

本当、苦労したよ・・


生物育成のための惑星改造要素の作成。

生命発生のための生命発生装置の作成。

それらを各銀河に1つ、ないし数個用意すんだもん、大変だよ。

それも異なった環境にしてさ・・・

カイリの研究に影響を及ぼさないように細心の注意もしてさ・・

ほんと、自分を褒めちゃうよ。


今日は帰ろうかな・・・


と、思っていたらドアがノックされた。

返事をする前に勝手にドアが開く。

カイリだった・・


「お待ち~!! できたぞ!」

「えええ~、これから帰ろうとしていたのに・・」

「じゃあ、帰る?」

「いや! 誰が帰るか!」

「だろ?」

「・・いや、なんだ、ありがとう。」

「おうよ、どう致しました。」

「何それ。」

「だって、お礼を言われてあたりまえだろう?

 だから、どう致しました、だよ?」

「・・・・」


「じゃ、俺、帰るから、頑張れよ。」

「おお、サンキュウ!」

「だれが産休じゃ!」

「・・なあ、疲れているから、これ以上は・・」

「あははははは、じゃあな。お先。」

「おお・・」


本当に台風なような奴だ。

でも、本当に気持ちいい奴だ。


さてと、助手に手伝ってもらおう。


「キルス! 手伝ってくれ!」

「ええええ、帰っちゃだめ?」

「当たり前だろう?」

「彼女と待ち合わせが・・」

「ふ~ん、で、名前は?」

「え? あ、名前? 名前ね~・・」

「何考えてんだよ! 嘘いってんじゃないよ!」

「・・ばれちゃったか。」

「あたりまえだろう? お前に彼女ができるなら、俺にも出来ている。」

「なんですか、それは? どういう公式ですか?」

「俺が公式だ。文句ある?」

「・・ありません。」


「よし、無空間のある部屋に行くぞ! これを持ってくれ。」

「は~い。」


私は不器用である。

小さな惑星に、作った種(ナノマシン入り)を注入するなんてできない。

助手のキルスにお願いするしかないのだ。

頼んだぞ、キルス、と、心で感謝する。

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