終点

『終点、終点。みなさまお疲れ様でした』

 車掌さんの格好をしたロボットが言う。それと同時に電車が止まる。

 薄ぼんやりとした光に包まれたホームに、私たちは降り立つ。電車の扉が閉まって、車掌さんは『それではさようなら』と言いながら、運転席へと戻る。ややあって、動き出して、電車は見えなくなっていく。見えなくなっていく。ホームには、私とクロだけが取り残される。

 後ろを向いて、歩き出す。

 改札口を通り抜けて、外へと出て行く。クロを抱きかかえて。切符は置き去りにしていく。もうこれは私には必要のないものだから。

「ダリア、これからどこに行くの?」

「どうしようかな。ここまで来たらどこにだって行けるからね」

 お互い笑い合って、歩いて行く。行き先なんて決めてないけど、どこに行ったっていいんだって思うと、どこへだって行きたくなってしまう。とりあえず朝になるまで歩いてみようかな。

「さ、行こう。クロ」

「そうだね。行こうか、ダリア」

 クロはするりと降りて、横を歩く。そしていつものようにわざとらしく「にゃあ」と鳴いた。


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少女終末論 武田修一 @syu00123

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