10 神様のいる山
神様のいる山
優しい風が吹いて、……空が晴れ渡って、そして、目の前には君がいた。……ずっと会いたかった天音が、笑顔で、幸多のことをじっと見つめていた。
「こんなところでなにしているの? 幸多さん」と幸せそうな顔で天音は言った。
「君に会いに来たんだよ」
そう言いながら、幸多は涙を流した。
ずっと我慢していた涙を、その目からぽろぽろとこぼした。
「幸多さん」
天音が言った。
「ずっとあなたに会いたかった」
「僕も、……ずっと、君に会いたかった」泣きながら幸多は言った。
幸多はそっと彼女のことを抱きしめる。彼女は幸多の背中にそっとその懐かしい小さな白い手を回した。
二人はゆっくりと手を伸ばす。その手は確かにお互いの手と手を捕まえた。
二人は強く抱きしめあう。
「ありがとう」幸多は言う。
「私のほうこそ、どうもありがとう」天音が言う。
やがて、大きな木の根元で抱きしめあう二人の姿が、ゆっくりと、淡い光のような現象になって、消えていく。
二人の消えた神様のいる山の山頂に吹く風に、小さな白い花と赤い花が揺れている。
その風景を見ている人は誰もいない。
神様のいる山 終わり
神様のいる山 雨世界 @amesekai
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