しかと刮目せよ! 一大スペクタクル洋画、陽澄ロードSHOW!

 はいよー、やってまいりましたよ。お楽しみの日曜すずめ劇場。

 今回の物語の主役は、戦うシングルマザー!
 荒廃した近未来世界に現れる謎の怪物、スクラップ・クリーチャーをバッタバタと華麗になぎ倒す、スーパー強くて美人で、おまけにおppもすごい、ハイスペックおかあさんです!
 
 もうですね、あらすじ読んだ時点で物語のクオリティの高さは概ね予想しておったわけですが、見事その予想をどぴゅーんっと上回ってくれましたね。

 本格アクション映画顔負けの戦闘シーン、推敲を重ねたであろう世界情勢設定、各種武装や電脳チップなどのテクニカル設定、見事にキャラが立った愛おしい登場人物たち。紡がれる壮絶な過去と、時々ほんわかエピソード。
 そして一転二転でハラハラドキドキが止まらない、ときめきどこまでもエスカレートなドラマ展開。 

 今回も、爽快な洋画を一本観終わったような満足感を得ることができました。

 これもう、ハリウッド映画ですやん。
 ハリウッドならぬ、スズメッド映画ですやん。
 荒廃した大地を、空を、スカイスーツで縦横無尽に飛び回って戦うシュカさんの姿が、一話の時点で眼前に浮かんできますやん。
 畜生、また俺の目を盗まれた……素子おおおお!

 物語の舞台自体は、近未来SFのテンプレ的要素もおさえつつ、そこまでエポックメーキング……というわけでもないのですが、凄いのは、このゴリッゴリSF洋画ワールドの主役を、「子持ちのおかあさん」にしちゃったところですね。

 シュカさんが某少佐的な、ただの凄腕パワフルウーマンだったら、それこそこの作品に真新しさを感じたりはしなかったでしょう。
 しかし、これが五歳児の母となれば……もう、キャラ付けは完璧。

 子持ちの読者さんなら、ある意味スクラップ・クリーチャーよりも厄介な生き物相手に悪戦苦闘するシュカさんの育児エピソードを見て、思わず「あるある~」と唸ってしまうこと請け合いです。
 ストーリー始まって早々、主人公にここまでスルッと感情移入させてしまうSFは、非常に珍しいかもしれません。

 本格SFストーリーをSFに明るくない読者にもサラッと読ませてしまう作者さまの客引きテクと絶倫の技量については、私もすでにうっふんあっはんと骨身に染み込まされておりますが(?)、なるほど今回はこう来たかと膝を打ちました。

 そうなんです、一流の技量を持つ美人レアメタル・ハンターも、血の通った人間なんです。可愛い子供の親なんです。ぼくらはみんな、生きているんです。ミミズだってオケラだって小説の登場人物だって、みんなみんな生きているんです。
 ああ、タ〇コマたちの大合唱が聞こえてくる……(幻聴だ)

 さあさあ、「SFなんて堅苦しいのはごめんだぜー。それよりおっぱいだー!」などと嘯いている、思春期SF敬遠読者たちよ。騙されたと思って、この物語を読んでみてください。
 きっとあなたたちの心のSF史に、新たな1ページが刻み込まれるはずですから!

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