暗闇が苦手な人ってね、もうどうにもなんないわけ。
だって暗いんだもん。それだけで怖いんだもん。
そんな時ってさ、誰でもいいから来てくれー!って思うわけだけどさ。
でもやっぱり、来て欲しい人っているわけなのよ。
親友だったり、家族だったり、先生だったり……想い人だったり。
その大ピンチにたまたま現れたのが想い人だったらどーするよ?
ほら、あれよ、吊り橋効果? あれに近いものあるよね。
大ピーンチ! そこに王子様のように思っていた人が現れたら?
その人が、絶対に好きになっちゃいけない人だったら?
神様がちょっとだけサービスしてくれたんだもん、その時くらいは甘えたっていいよね? ね?
いやぁ、なんて素敵でほろ苦い、青春短編。
ときめきと瑞々しさを失って久しい私も、思わず純朴な乙女ハートに感染しておりました。盗んだセーラー服で走り出しそうになりました(ただの変質者)。
作者さまの彩り豊かな心情描写は前々からすんばらしいと思っておりましたが、本作でもその手腕が遺憾なく発揮されております。さすがの一言でございます。
読む前は、「暗い鍾乳洞だなんて……なんてえろてぃっくなシチュエーションだ……」「鍾乳洞……乳……うわあああ!」などと、阿呆な男子中学生のような雑念に脳を支配されていた自分が恥ずかしいです。
もし私と同じように、永遠の男子中学生みたいな阿呆な心を持ち続ける方がいれば(凄まじく無礼な言い草)、そんな方にこそ、ぜひ読んでもらいたい作品かもしれません。
きっと読後には、あなたの心の中に住まう丸刈り頭のエロ小僧が、花とゆめな気持ちに満たされた黒髪の乙女に変貌を遂げていることでしょう。
すでに薄汚れた大人になってしまった私にとって、二度とは取り戻せない青春の甘酸っぱさ、苦々しさを思い出させてくれた、青春タイムマシーンのような作品でございました。
あー、青春っていいなー。JKっていいなー!(ただの変質者)