最終話 おっさん、魔王の玉座となる

 あれから、どれくらい経っただろう。


「チサ様、ダイキ様、お客様です」


 ボクがチサちゃんとゲームで遊んでいると、セイさんが来客を報告してきた。


「お邪魔するわよ!」

「お久しぶりです。ダイキさん」


 マミちゃんとケイスさんである。みんなで世界を手に入れても、二人は相変わらず主従の関係だ。


「変わらないね。マミちゃんは」

「新しい魔王と玉座になったっていうのに、そっちも相変わらずねっ!」



 あれから、みんなはそれぞれの国の王様を名乗っている。


 世界が大きすぎるなら、みんなで少しずつ支え合えばいい。


 数々の戦いを経験してきたボクたちなら、できるはずだと提案した。


 結果、今のところうまくいっている。


 といっても、やることは冒険とか畑仕事なんだけど。


「聞いて。またトシコが子どもを産んだわっ!」

「すごいね。もう三人目じゃん」

「ククのところは、四人目ができるそうよっ! 二人のお見合いに行くわよっ!」


 向こうは、子育てで大変そうだ。


「ケイスさん、二人目の息子さんが、学校に上がるんですよね」

「はい。長男と違って手のかかる子でしたが、無事に」


 ボクとケイスさんが話していると、マミちゃんが会話に入ってきた。


「そりゃあそうよ。あの子はあたしに似たもの!」


 なんだか、誇らしげだ。


 二人もだが、みんなもうすっかり親になっている。こうして会えたのも、いつ以来だろう?


「で、お二人のお嬢さんは?」


 ケイスさんが尋ねると、セイさんが微笑みながら首を横に振る。


「またですか……」

「はい。また学校にも行かず、勝手に冒険へ行っちゃって」


 ボクたち夫婦で行くよ、って言っているのに、彼女ったら聞かないんだ。


「ただいま。また西の洞窟のボスを倒した来た」


 泥だらけになった娘が、白い歯を輝かせて帰ってきた。

 その姿に、ボクは既視感がある。

 娘自体に、その記憶はないだろうけど。



「イクミ、ダメだよ。ちゃんと学校に行かないと」

「えー。学校つまんない。それに、ママがそんなんじゃ、冒険できないじゃん」


 ボクとチサちゃんの娘であるイクミが、チサちゃんのお腹を指さす。


「来月になったら、弟が生まれる。だから、とびっきりのプレゼントしないと」

「いいから。学校でちゃんとマジメにやっている姿を見せるだけで、弟には自慢できるからさ」

「えー」


 ホントにこの子は、自由人だ。


「イクミ、学校は思っているより楽しい。楽しさは自分で発見するもの。それは、あなたがよく知っているはず」

「そうだけど……」

「ダンジョンでも、学校でも、自分が楽しむ姿勢は同じ。あなたならできる」


 かなりまともなことを、チサちゃんが言う。


「はあい」


 チサちゃんの意見なら、イクミもマジメに聞くのだ。


「オトナになったわね、チサ」


 マミちゃん含め、みんなオトナの体になっていた。


 チサちゃんは、かつて夢に出てきたような大人の女性に変わっている。口調なんかは変わっていないけど、ちゃんと成長しているんだ。


「ダイキ、わたしは動けるから、トシコとヨアンの見舞いに行く」

「わかったよ。疲れたら言ってね。ボクは玉座だから遠慮しないで」

「ありがとう、ダイキ」


 ボクたちは、子どもを産んだみんなの元へ。

 

 今までは、誰かが支えていた世界である。

 ボクたちは自立して、ここを支えなければならない。

 でも、チサちゃんと一緒なら、なんでもやれる気がした。


「帰ったら、エィハスのお店でからあげを食べに行こう」

「やった。ダイキ、だいすき」

 


                             (完)

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おっさん、魔王の玉座になる 健★全★版 -幼女魔王と一緒に座っているだけでレベルMAX!- 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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