主人公が最強でずっと成功し続けたり、ヒロインが増え続けてイチャイチャを続けていくような展開は飽きがきやすいのですが、この作品は未来視において悪い展開を見せることで落差を作れていて楽しめました。
ヒロイン候補とは一緒に行動せず、別れることになるので新鮮な気持ちで新しいヒロイン候補と出会えます。主人公は煩悩たっぷりですが、未来視によるトラウマでヒロインを決め切ることができず、もどかしく感じます。
未来視のルートはしっかり練られた鬱展開が多く、幸せなルートではあえてそれを見せることで現在の自分はもうそのルートを進むことができないと失望感を与えてくれたりしました。多くのルートを考えられていることはすごいと思いました。
主人公は最強の肉体を持っていますが、自傷により傷ついたり、唯一効果のある空間属性の攻撃に怯えたりして情けないなと思いました。
しかしそこが凡人らしくて親しみも持てました。
また主人公はよく保留することがありますがそこも決断力がない凡人らしいなと感じました。
登場人物の心情表現がしっかりしていて、読んでてめんどくさいキャラと思えました。
明らかなレア種よりうさぎの方が強いというのは面白かったです。
宝箱から次はどんな道具や仲間が登場するのかワクワクします。同様にどのような効果の宝具が出てくるのかも楽しみでした。
一年ほど前に読み始めた時、排泄やシモの描写が(もちろん迂遠ですが)あってびっくりしました。アイドルがうんちやおしっこをしないように、キャラの性器やトイレ描写を潔癖に避ける作品が巷ではほとんどだからです。
さらに、普通のボーイミーツガールでは『いい雰囲気になること』をゴールとして物語が閉じるか、緊密な関係でも性だけ消臭したまま主人公が奮起して突き進んでしまう非人間性があります。
異質な力を以ってしても、泥臭くて『地続きな現実』で苦悶していく主人公。精神が生臭くて大義無し欲望有りなところが身近で好きです。
だからこそ関わる人が増えて人並みに成長していく様にも一層力が入ります。
個人的には、”子供と孫という家族再生産まで描写した『無職転生』”に並ぶ怪作です。ノクターンノベルでなくとも人の営みとして『性』は避けて通れません。モチベーションの源泉であり、苦しみも幸福もその周りに多くあるのですから。
『普通の人間の青臭い理想』と『現実の狭間』が魅力的な”最強モノ”です。