最終決戦 決着

 ボクはムダだとわかっていても、邪神戦艦を押し出す。


 無情にも、戦艦は地球を破壊するために前進してきた。


「ムチャですよ。あなたたちの力でわたしは倒せない。こんなケースは、過去に何度もありました。ルチャでさえ、我々にはかなわなかった」

「負けません。ボクは、一人で戦っているわけじゃない」


 ボクには、みんながいる。だから、不思議と負ける気がしない。


「そうだよ!」


 明るいドワーフ娘の声が聞こえてきた。


 ボクたちの隣で、巨大なゴーレムの手が伸びてくる。


 あれだけ重かった戦艦の巨体が、徐々に押し戻されていく。


「オンコ!」


 バカでかいゴーレムを操っているのは、オンコだった。


 このゴーレムは、たしか「オンコが魔王になった世界線」で戦ったゴーレムじゃないか。


「オイラだけじゃないよ!」


 乗っているのは、エィハス、ゼーゼマン、ベルガたちだ。


「アーデルハイドまで」


 みんな、この世界を守るために駆けつけてくれたのか。



――そのとおりだ。



 この声は、ボク? いや違う。彼だ。


「ディエロゴ、キミだね?」



――ああ。ダイキ、決着をつけるんだ。

――負けたら承知しない。



 イクミちゃんの声も、聞こえてきた。



「チサちゃん、終わらせよう」

「うん。ダイキとなら、できる」


 チサちゃんと手をつなぐ。


「おおおおお!」


 チサちゃんとボクが、パワーを全開にした。


 ボクたちとゴーレムが、黒い光に包まれる。ゴーレムよりさらに大きい、ドラゴンの形を取った。邪神戦艦さえ、小さく見えるほどの。地球が、黒いドラゴンの心臓部に収まる。


「アカン、こいつはルチャや! いや、ルチャよりでかい」

「ルチャ……あなたまで手を貸すのですね? そこまで、彼らには。そうですか」


 急激に、邪神戦艦の動きが鈍くなった。


「さよか。今までワシらが倒してきた歴代の魔王まで、あいつらに手を貸してるんや。潮時か」


 邪神ラヴクラホテップも、このドラゴンの正体に気づいたようだ。


 黒竜が、大きく口を開ける。


「ママ、パパ。これが最後の一撃」


 チサちゃんが、杖の先を戦艦へ向けた。


 最大級のブレスが、戦艦を消し飛ばす。


 星よりも大きなブレスによって、巨大戦艦もだんだんと削れていった。


「ああ、負ける。ワシらが。せやけど、これでええんやな?」

「はい。彼らなら、きっと世界を支えられます。我々は、不要なのです。何万年も続いた支配も、ようやく終わります」


 ロイリさんと邪神が、ブレスに飲まれながら消えていく。


「勝った、のか?」

『はい。おめでとうございます』


 頭の中で、ロイリさんの声だけがした。


『これでようやく、我々は役割を終えることができました。これからは、あなたたちの時代。一人で背負い込むのではなく、小さい力が一つに合わさって支え合う時代が来るのです。こんなんはあるでしょうが、あなた方ならきっと』


 ロイリさんの気配が、消えていく。


 何もなくなってしまった世界を目にしながら、ボクは意識を手放した。

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