ロイリ、最終形態

 ボクたちの戦闘フィールドが、宇宙へと変化した。


「ダイキ見て! 地球よ!」


 マミちゃんが、ボクの背後を指差す。


 背中には、青い地球が見える。


「邪神、完全殲滅形態」


 ロイリさんが、全裸になった。玉座となった邪神に座って、腕で胸を隠して足を組む。


 その邪神玉座は、星を覆い尽くすほどの大きさになっていた。まるで、男根の形になった巨大戦艦である。先端が、槍となっていた。


 邪神と完全に融合し、巨大戦艦となった邪神が、地球へと突っ込んでいく。地球を貫く気だ。


「させるか!」


 ボクは、巨大戦艦を押し戻す。


「ダイキ、ママの狙いは、地球の破壊」

「違います。この世界すべての破壊です」


 ロイリさんの役目は、魔王候補となる子どもたちを取り込んで、世界の安定をはかることだった。未熟な魔王に頼むより、自分で管理したほうがいいと。


 マルチな世界線を維持するためには、自分のような『柱』的な存在が必要なのだと。世界は、邪神クラスでなければ支えきれないそうだ。


「あなたたちは、もう世界を支えなくていいのです。あとは、わたしに任せなさい」

「そんなのエゴじゃないですか!」


 押し返しながら、ボクはロイリさんに反論した。


「なんと言われようと、かわいい子どもたちに世界までは任せられません」

「この子たちの存在意義は!? 魔王候補者たちは、どうなるんです?」


 勝負に負けた子どもたちは、別の世界線で普通の子として育つという。だから、安心しろといい出した。


 ヨアンさんの母親みたいな感じかな?


「ご安心を、また産み直しますので」

「子どもたちから未来を奪う権利は、親たちにはない!」

「それで世界が崩壊してしまったら?」


 ロイリさんが、冷たく言い放つ。


「世界を安定させるという重圧に耐えきれず、結局は親に頼ってきた世界線もありました。何度も」


 重い話を、ロイリさんが子どもたちに言って聞かせる。


「……ボクは、チサちゃんを信じます!」


 どうあがいても、絶望的な状況だ。


 戦艦は大気圏を突破しそうな勢い。


 かたやボクは、魔力に守られているとはいえ戦艦を宇宙へ押し出せず。


 それでも、ボクは戦艦を押し返すのをやめない。


「子どもたちにだって、自分たちの世界があるでしょうが!」


 今、チサちゃんたちは自分たちの力で羽ばたこうとしている。


 すぐそこにある快楽に身を委ねず、踏ん張っていた。


 それは、ボクたちだけじゃない。


「力を貸すわ、ダイキ!」

「一人ではイカせません、ダイキさん」


 マミちゃんとケイスさんが、手を貸してくれた。


「ぼくだって、まだチサとの勝負で決着がついていないからな」

「あらあら、こんなにイキイキしたネウロータくんって、お城でも見たことがないわね。ダイキくんに触発されたのかしら?」


 トシコさんが、ネウロータくんの変化に驚いている。


「チサとダイキを支えるぞ、クク! 一緒にぶっ飛ばすぜ!」

「ええ。お供しますわ、魔王ヨアン!」


 ククちゃんとヨアンさんが、ボクの背中を押してくれた。


 魔王と玉座が六人いれば、なんだって怖くない!

 

 邪神戦艦が、わずかに後ろへ下がった。

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