事情聴取
エル:今回の事件、目撃者が居ない故に…犯人像、殺害動機の一切が不明。事件現場の屋敷から逃亡を謀ったあの幼子のみが手掛かりとされた。
あの幼子は………何故逃亡した?本件にどう関わった?
酣:逃亡を指示したのは、主様です。自らの殺害の瞬間を目撃した張本人ですし、現場に落ちていた私の刀身を拾い上げてしまった為に…最有力容疑者として処断されてしまうのは容易に推察できることだったのです。
エル:さ、殺害の瞬間を……?(つまり、幼子が反逆した…という噂は嘘だと分かったが……)
酣:………ええ。さすがの主様も、あの方に気が付かなかった為に見られてしまったのです。
エル:そもそも…人斬りの動機はなんだったのだ?
酣:………"償い"の一環である、とだけ申し上げます。被害者様の事を調べればあるいは…何か分かるかもしれませんね。
エル:そうか。(人斬りの犯行か。動機など……語るに尽きる、だろうが)
酣:ちなみに私共がお側に居る理由……それは、主様が望んだからです。
エル:………あの人斬りが?
(酣は目を閉じると小さくため息をついた)
酣:そうは見えないでしょうが……主様は子供を見ると放っておけない性格なのです。
エル:こう言っては従者のお前にとって失礼かも知れぬが……彼奴に他者を省みる気持ちなどあるように見えぬ。
酣:ふふ…………否定は致しませんよ。
エル:(否定はしない…か。従者にしてはずいぶん主について辛辣な評価をするのだな)
酣:……………エル様、日向様は、あの方をどうなさるおつもりなのでしょうか。
エル:案ずるな。諜報の権限で参考人として公に保護すると言っていた。無論、あの幼子が逃げなければ…だが。
酣:そう、ですか。
エル:……不服か?我々が身柄を預かるのが。
酣:……いえ、めっそうもございません。むしろ、これ程に心強い事は無いでしょう。先程のように主様が戦ったとしても…限度がございますし。
ただ……唯一心配なのは日向様の事です。私共がお側にいる限り、日向様は…
(酣は悲しげな表情になると、うつむいてしまう)
エル:自責の念は、そう簡単には消えない。先程も話ができると言われたが、嬉しいとは思えないと……不安や苦しみに押し潰されそうだと……
お前たちの為にも、どうにかして師匠を救いだしたいと…ずっと思っているが………俺では何もできない。
また自ら死を乞い願うのではと思うと、下手にお前たちに説得も頼めない…!
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