過去の柵
日向:………いえ、大丈夫です。とにかく助かりました。
(日向はふらつきながら零を抱えたまま医務室に引きこもった)
そう、いえば………左肩を触ったとき…酷く痛がってましたっけ………
怪我なら……治…療を……しないと…
(日向はそのまましゃがみこみ、動けなくなった。頭の中に浮かんだ"可能性"………。あり得ないと何度も否定するが、確かにあの瞬間感じた懐かしい感じは…否応なしに"彼"の生前を彷彿とさせるものだった。
その感覚はあの時彼を救うことが出来なかった自分の無力さを伴って……酷い冷や汗と目眩として襲い掛かる。)
………とても私一人では…手に終えない……ですよね……(エルに…治療を任せて……私、は落ち着かないと……)
……でも……立てませんか……
ごめん、なさい………もう少しだけ…
エル:失礼します、師匠…!?しっかりしてください!
(しゃがみこんで目を閉じている日向を見つけると寝床に担ぎ込んだ)
日向:………エル……ですか?お願いが…あります………彼を……診てあげて………くれませんか?
エル:ならまず師匠を診ますよ!そんな状態で……
日向:………いいんです。私は…過去の柵に…囚われているだけです、から……少し休めば…安定します。
せめて、怪我の治療だけでも……
エル:………分かりました。師匠は休んでてください。(正直、症状がいつもより重いから真っ先に診たい所だけど、あの状態の師匠は頑なに拒絶するから従った方が賢明……か…)
日向:ありがとう…エル。(そのまま眠ってしまったようだ)
エル:………怪我って…外傷は見当たらないけど…(そういえば、担いだとき、変な感じだったっけ。ええと…)
<二時間後>
エル:(とりあえず脱臼した左肩は何とか治ったが……胸元の焼き印はどうしたものか。出血しているとはいえ下手に触れると激痛に苛まれるだけだろう。
……さすがにこれは師匠に頼もうか。問診こそ出来ないが容態は安定しているからな。どちらにせよここまでか。)
(エルは寝床に寝かせた日向の容態を確認しにいった。険しい表情だが症状は幾分治まったようにも見える)
エル:(師匠がここまで酷い発作を起こすなんて……"人斬り"が逝ったとき以来か。そう簡単に心の傷は癒えないと言うが…何故突然?)
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