にくにくしいもの(それと暗夜行路)

「虚腔」のあらすじの時点で魅力的なのです。

「少女は穴の凹凸をごまかすために様々なものを埋めるが満たされない」に次ぐ一文が「少女は母を殺し〜」。「いやいや、どういう経緯なの?」とか思ってしまったときにはもう──惹き込まれているのです。

気味の悪い精緻な描写も然ることながら、本作最大の魅力は“行先の不透明さ”にあります。

自分は一体どこに連れて行かれようとしているのか、この物語の着地点はどこにあるのか──中途半端な予測力など何の役にも立ってはくれないのです。

オムニバス形式なので、タイトルが違えばどこから読んでも楽しめると云う点も特長の一つ(個人的には上から順当に読むことをお勧めしますが)。

どの物語を選んでも、まるで暗夜行路をしているかのような不安定かつ先の見えない“喜び”を味えること請け合いです。

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