第8話
僕の名前は
ひょんなことからこのトアル王国に召喚されてしまったんだ!!
だけどこの国の人々はとても良い人達でいきなり異世界に連れてこられた僕達にこの世界で生きていくために必要な知識や技術、訓練そして食事を与えてくれる。
魔族が一体どんなことをしてきても僕はこの国の人々の手助けをしたいし、同じくこの国に召喚された僕の高校の生徒や先生達の道しるべになりたいと思ってる。
そんな願いが僕らを召喚した神様に通じたのか分からないけど、僕には『光の勇者』の称号があるってことが召喚されてからしばらくたって判明したんだ。
『勇者』の称号を持つのは召喚者の中でも僕を含めて五人だけだそうで、このことは絶対に信用できる人以外には秘密にしておいてほしいと言われたから、とても重要な役目なんだろう。
僕には少し不相応な気もするけど。僕にできることなら全力でやり切って見せようと思う。
「誠君?
そんな一人で難しい顔をしてどうしたの?せっかくの朝ごはんがおいしくなくなっちゃうよ?」
そう言って、僕の隣に座ったのは僕の幼馴染で同い年の
律は幼稚園から高校まで同じで家も近いことから昔も召喚される前までよく一緒に過ごしたもんだ。
今は適性の違いから違う訓練をしているせいで少ししか会えないけど、朝食やお昼休みにはよく一緒にご飯を食べているんだ。
「おはよう律
いや何、もう僕たちがこの異世界に召喚されてから二か月ぐらいになると思うと、時間がたつのは早いなァってさ。」
それを聞いた律はウンウンと頷いた。
「そう言えばそうだよね。もう二か月になるのかぁ。
・・・私達、家に帰れるのかな?」
「大丈夫だよ。何があっても僕が律を守るから」
「誠君・・・。」
律は少し頬を赤らめるとうつむいてしまった。どうしたんだろう?何か悪いことを言ったかな?
「なぁーに、朝からイチャついてんのよ!!
不純性交友でしょっ引くわよ!!」
「あっ、その、尾白さん
竜崎君と朱雀さんは単におしゃべりしていただけn・・「先生は黙ってて!!」
ひィっ!すっ、すいません・・・」
背後を振り返るとそこには同じ学年の
伊吹とは高校に入学して一週間ぐらいたった時にとある事件に巻き込まれたときに一度は容疑者扱いされたものの無事に事件が解決してから付いてくるようになった。
水薙先生は今年から保健室の先生として僕らの高校に着いた方で、教師一年目らしい。
彼女とは日本の僕の家の近くの駅でバッタリ会って一緒に買い物をしてから何かと行動を共にしているんだ。
「伊吹も先生もおはようございます。
ってか伊吹!!不純性交友なんて俺と律はただ話していただけじゃないか!!」
「どうだか。
この後二人で・・・」
伊吹は何かしゃべろうとしていたがなぜかいきなり顔が赤くなった。
「とっ、とにかく今日は作戦結構の日よ
誠も律もわかってるでしょうね?」
「もちろん分かってるよ伊吹ちゃん!!
お姫s・・・「なに計画を堂々と喋ろうとしてんのよ!!」 モゴ・・・。ごめん伊吹ちゃん」
律の口を伊吹が手で覆ったため律は最後まで喋ることができなかった
そう、今日は大事な作戦を決行する日
というのも
「リュウザキ様、本日はよろしくお願いしますわ。」
トアル王国のお姫様であるエインと内緒で王都を散策する作戦を決行する日なのである。
_____________________________
「よし!!変装はこれで大丈夫だね!!」
エインを目立たなくするための変装も完了したから僕は隠れていた部屋の扉を開けて外に出た。
?、今何かチラッと見えたような・・・?
まあ、気のせいか。
「これで私がこの国のお姫さまだってことは分かりませんわね
それでは竜崎様行きましょう!」
改めてエインを見てみると、茶色系の町娘がよく着ているような服装をしており誰が見てもお姫様には見えない
王都がすごい楽しみなのかエインは僕の腕を握ると猛然と走り出した。
「あ、ちょっと待ちなさいよ!!」
伊吹達が後ろから慌てて追いかけてきた。
エインに従ってしばらく城内を歩いて行くと最終的にエインは一つの扉の前で止まって僕たちの方を振り向く。
「あの・・・、エイン様?
ここに城の外へ出る道というのがあるんですか・・・?」
エインは水薙先生の問いに大きく頷くと
「そうです。こちらに王都へ抜けて出る道があるんですよ。
それと私のことはエインとお呼びくださいミズナギ様。」
と言ってドアを開けた。
室内は使用人達の休憩室なのか古そうな大きいテーブルが部屋の中央にあり、棚には安っぽいティーポットやカップ、菓子類の入ったバスケットが置かれている。
エインに手で促され俺達は部屋の奥にある煤まみれの暖炉の前に集まった。
一見何の変哲もない暖炉のように見えるけど、これが秘密の抜け道なんだろうか?
そう僕が思っていると、エインが暖炉の前にかがんで暖炉の中のレンガのブロックの一つに触れた
すると
ガコッという音がしたと思うと暖炉の正面の壁が下に降りていき、僕たちの目の前には一つの穴が現れた
「この抜け道は王家の中でも限られた者しか知らないんですよ~
他の方には絶対に喋っちゃダメですからね」
流石、異世界。僕は思わず呟きそうになるのをこらえて僕達は穴の中に入って行った。
「それにしても、今日一日本当に楽しかったなっー!!」
抜け道への帰り道、夕日をバックに大きく伸びをしながら律は言った
「色んなお店にも行けたし、エインにも王都で友達が出来たしエインもまた来なきゃね!」
伊吹も先頭を歩きながら満足そうに言っている
皆が満足したのならば本当に良かった。
今日は色んな店を見て回ったり、皆でお茶を飲んだり、下町でちびっ子たちと遊んでと盛りだくさんの一日で疲れたけどとても楽しかったよ。
ああ、そう言えば
「クロエさんもマリーさんも本当に今日はありがとうございました。
おかげで僕もエイン達もいい一日になりました。」
僕は前を歩くクロエさんとマリーさんにお礼を言った
クロエさんはエイン専任のメイドさんで、彼女が物心つく頃から一緒に過ごしてきたからかエインとの息もピッタリでとても頼りになる人なんだ。
そしてマリーさんは僕に魔法を教えてくれた人であり、なんでも相談できる先生みたいな人だ
「いいのです。リュウザキ様
姫様も本日は楽しめたようですし・・・。あら・・・?」
「どうしたのクロエさん?」
こちらを振り向いているクロエさんの表情はどんどん青くなっていく
後ろに何かあるのかと思い僕も後ろを振り向いてみると、
「エイン・・・?」
後ろを歩いていたはずのエインの姿はそこになかった。
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