第2話
王様との謁見(顔も見えなかったが)も終わり、俺達はなぜか一旦部屋から出され廊下で列を作って待つように言われた。
「これから皆さまの持つ能力を我がトアル王国に伝わる魔道具で一人一人鑑定していきますので
自分の番が来るまでお待ちください」
そう白ローブが言うと列の一番前に並んでいた五人を連れて部屋に先程まで俺達がいた部屋へと入っていった
列が半分ぐらいになった頃、ようやく俺の番がやってきた
白ローブに促され俺を含めた五人は部屋の中に入った
改めて部屋の中を見てみると先程はギュウギュウ詰めで気がつかなかったがどうやらここは謁見のための部屋の様で広い天井から赤い布(タペストリーっていうのか?)が垂れ下がり壁際にはピカピカに磨かれた鎧が左右に何体も整列しており結構な威圧感がある。
そして俺達の目の前には五つの机が置かれておりそれぞれの机の上には中が曇った水晶玉と真っ黒な石板が置かれている、たぶんあれが鑑定するという道具なんだろう。
部屋の奥は俺達がいる場所より数段程高くなっておりその上には豪華な椅子がデンッと置かれているが生憎その席は空っぽで王様の姿はこの部屋にはなかった。
どうやら俺達が一度退室した後に王様も部屋(謁見の場だから間かもしれないが)から出て行ったようで豪華な椅子の方の右の壁際には扉があった。
残念、結局顔を拝めなかった
白ローブは俺達の前に来ると
「それではこれから皆さまの能力を鑑定させていただきます
各自一番近い机の上に立ったら右手で水晶を握ってみてください。」
そう言ってワクワクしたような感じで俺達を見た
・・・なんか照れるな。
俺は一番右端の水晶を言われたように握ると何やら背筋を冷たい手で触られるような不快な感覚がすると石板に文字が二、三行浮かび上がった
こっちの世界の言葉なんだろう、俺にはその文字がなんて書いてあるのか分からなかった
・・・でも、あいつらの話が理解できてるからこっちの世界の言語は分かるんだよな?
なんで文字も理解できるようにしておかなかったんだ?
そこんとこ微妙な異世界召喚だな
帰り方が分からない今、最悪この世界に永住ってことになるかもしれない。
それならばこの世界の文字くらい読めるようにならなければ後々大変そうだ
「んー・・・、クシナ様はどうやら魔法にかなりの適性があるようですね
逆に剣や格闘術といった近接系の適性はないようですね」
白ローブは石版を読みながら俺にそう言うと今度は隣の生徒の方へむかった。
石板は水晶玉に触った者の大雑把な得意不得意を教えてくれるらしい
日本にあったら進路とか考えるのに便利そうだな
というか・・・魔法ですか。
・・・いいっすね、
俺も男の子だからそう言うの好きだわ
剣振り回して
「アルティメット・アタックウゥゥゥ!!」
とか叫んでなんか剣から光線とかも出してみたかったけど、うん
まあ、そんなことは置いといて
他の四人の方をちらっと伺ってみると
まず俺の隣、つまり右から二番目の男子学生だな
名前知らないしたぶん違う学年と思われる男子学生は剣と魔法どっちも得意らしい
魔法剣士って奴だな、
なかなかに強いがゲームだと終盤は火力不足になったりすることが多いイメージだ
次、真ん中の人
コイツは知ってる同じ学年の
茂君はうちの高校の制服はブレザーなんだが何故かいつも学ランを着て登校してくる常軌を逸した生徒で不良である。
しかし不良といっても校内でタバコを吸ったりカツアゲなどはせず、むしろ困った奴の相談に乗ったり、捨て犬を拾ったら里親を見つけるまで面倒見たりと『兄貴』のあだ名に恥じない兄貴っぷりなのである。
・・・まあ、兄貴って呼ばれているのは彼が重度のシスコンだからなんだけども
そんな彼はどうやら格闘術や指導者といった方に適性があるらしい
兄貴のイメージそのまんまじゃねえか
そして茂君の隣、少し目つきが鋭い女子学生は風紀委員の尾白さんだ
そう、ツンデレ風紀委員の尾白さんだ
ぶっちゃけ俺も彼女のことは一年生で竜崎君と同学年ってこと以外知らん。
が、目つきが鋭い若干小柄な美人さんということは言っておこう
そして尾白さんは剣、特に刀に適性があるらしい
・・・それにしてもなんで竜崎君と一緒じゃないんだ?
こういう時は竜崎ハーレムで固まっていると思ったが
あ、茂君にブレザー着せようとしてたのか
んで、そのままなんやかんやでここまで来ちゃったと
風紀委員のお勤めご苦労様です。
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「んー・・・、クシナ様はどうやら魔法にかなりの適性があるようですね
逆に剣や格闘術といった近接系の適性はないようですね」
もうすぐ自分の番が来る、期待と不安の中で一番右端の生徒が神官に適性を鑑定されているのを聞き流しながら
燐は一年生でこの高校に入学した当初から同じクラスの何人かの男子グループにいじめられていた。
彼があまり他人と話さないこと、昼休みは誰とも話さずに教室の隅っこでライトノベルを読んだりしており
典型的な根暗ボッチに見えたというのもいじめの間接的原因であると彼自身は感じていたが、彼はそれをやめる気はなかった。
いずれ自分にも飽きるだろうと思っていただが
夏休みが始まる直前まで彼らの行為は終わることなく、燐はクラスカースト最下位の汚名を被っていた
そんな状況下で燐たちを巻き込んだ異世界召喚は彼にとってはまたとないチャンスであった
自分にもなにか恩恵や適性があるはずで、努力すれば彼らをぎゃふんと言わせることが出来るかもと思ったのだ。
ついに自分の番が来ると、燐は緊張で少し汗ばんだ手で水晶をソッと握った
背筋を冷たい手でなでられるような感覚がした後、石板に文字浮かび上がり神官は石板を読み始めた
「リン様・・・
これは大変言いにくいのですが・・・」
燐はこの言葉を聞いてまるで腹の中で何かが落ちていくような気がした
こんな風には先程までの四人には言わなかった、
「・・・リン様には何も適性がありません
魔法も剣も全て一般人以下です。」
燐はこれからの生活を考えると目の前が真っ暗になった
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