第7話

「どうしました?国内では入手が困難な品種のお茶で、味も匂いも良いと評判の物なのですが。

飲まないのですか?」


なんでお茶を飲まないのか理解できない。そんな風な口調でプルトさんは俺に尋ねてきた


「・・・ここが何処でなぜ俺が閉じ込められていたのか。理由が分からないとお茶なんか飲めるか。」


とりあえず不機嫌で反抗的な口調で返してみた。

するとプルトさんは一瞬目を細めてこちらを見た後一礼した


「なるほどこれは失礼いたしました。それもそうですね

 では一から説明いたしましょう。クシナ様は本日朝食をおとりになった後城内を歩きその後リュウザキ様ご一行の後を尾行していたという報告から、万が一魔族と手を組んでいてこのトアル王国を滅ぼす可能性があるとして私の部下がクシナ様を捕獲したのです。

因みにですがここは王都にある歓楽街内の建物の一つで基本的に娼館の体を擁していますが貴族と王族の密会や、重大な犯罪者が来られた時に尋問するために使われます。」


何やら天井から「チョッ、メイド長・・・」という言葉が聞こえてきたように感じたがそんなことはどうでもいい。


それにしても朝からの俺の行動を監視されているというのは気持ちが悪い

多分俺だけじゃなく召喚された学生と教師は全員監視されているのだろう。


「魔族と手を組んでいるだぁ?

 エルフやドワーフなんかにも会ったことないのに魔族と会えるもんか!

 一体だれがそんなデマを流したんだ」


全くもってたかが一回ストーキングしただけで魔族の手先と思われるとは名誉棄損もいいとこだ。


「・・・もとより貴方様がリュウザキ様方を付け回さなければこのようなことにならなかったのですが。」


「付け回すとは失礼な。

 俺はお姫さんにナニかあっちゃぁいけないと思って見張っていたんだ。竜崎君がケダモノになっちまってそっちのお姫さんを傷物にしたって言ったら俺達が一体何やらされるか分かったもんじゃない」


竜崎君がこの国の姫さんと関係を持ったら。当人は関係を持ったんだからこの国の為に戦うことを強要されてもいいが他の召喚者俺達たちもそれによって巻き添えを食うってことはありえないことでもない。


こんな、文化レベルが日本よりはるかに劣っている剣と魔法のファンタジー世界なら尚更だ


・・・まあ悪ふざけ九割、真面目一割といったとこだが


「貴方はこの国を信用なさっていないようですね。」


様が抜けている。少し怒らせたか?


「いきなり連れてこられたと思ったら魔族とか言うようわからん連中と戦えとか言うアタマお花畑な国を信用するほど俺の頭はお利口にできていないからな」


さあ、言っちまったぞ。これで明日の川に俺の死体が流されていないといいが。

だがこれでいい。俺は言いたいことを言ってやった。この国の奴に俺は一筋縄ではいかないぞっと示すことができた(多分)


別にそんなこと示したってなんの価値にもならないんだが俺はこの国、特に王族とそれに仕える者にはイラついてんだ。

そちらの勝手な都合で呼んどいて全て頼ろうとするその心意気が気に食わん。自分の国なんだから最初から最後まで自分たちで守り切れよ。



できないなら滅んじまえ。




「・・・なるほど、貴方様の言い分は分かりました。」


そう言うとプルトさんはメイド服のポッケに手を入れた。

来るか!?暗器来るか!?


俺の人生もとうとう潮時かという時にソレは起こった。




「メっ、メイド長!!大変です!!

 姫様が・・・、エイン様が何者かに攫われましたァ!!」



「なっ・・・っ!!」


流石のプルトさんも驚いたのかポッケの中に入れていた手をサッと取りだした。

その手の中にあったの茶色い豆が入ったガラスの小瓶であった。


え、何それは・・・。


「いや、お茶がお嫌いなのかと思って。

 亜大陸で取れるという豆の飲み物ならばお気に召すかと思いまして・・・。

 この豆が召喚者様方にはコーヒー豆という豆に似ているという話を聞きましたので取り寄せたのですが・・・。」


俺が何も言っていないのにプルトさんは答えてくれた


あっ。そうなの?

じゃあ殺されるとか杞憂?

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