万能勇者様とその相棒
夏男
プロローグ
都市の外輪に築かれた壁の上は強い風が吹いていて寒い
遠くには雪をかぶった美しい山脈が見え、イ〇スタ映えしそうな景色が広がっている
・・・のだが残念なことに生憎スマホはこの世界に召喚されて二日ほどで電池が切れ今では鞄の底で再び充電される日を待ちわびている。
今、俺達のいる壁の上では厳戒態勢がとられこの都市の兵士たちが忙しそうに機材の点検やそこかしこを歩いていて、そんな中でのんびりしているのは少しばかり気が引ける
何か手伝った方がいいかね?
「別に私の従者なんだから兵士たちの手伝いをしなくてもいいと思うけどね」
まるで俺の心を読んだのかの様な感じで俺の主である
たまに、いや結構な頻度で心を読まれたかのような物言いをしてくるのだが
顔にでも出ているのか?
「そんなことよりも今はこっちに集中しないと」
先輩の言う通りだ。敵はもう目前に迫っている
一度戦闘になったら後衛でも命の保証はない。
旅をしていて何度も危ない目に見舞われたが全くもって慣れやしねえ
それもこれも全て先輩のせいだ
どうしてOKなんて言ったんだろうか俺は
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夏休みが終わったというのにまだ暑いとはなんてことだ。
俺、久野 櫛名は額に流れた汗をぬぐいながら始業式で校長先生の話を聞き流しながらそんなことを考えていた。
うちの高校は始業式や終業式といったイベントは外でやるんだが、今日はあいにくの雨で体育館になった。湿気たっぷりかつ生徒と教師でごった返している体育館内はサウナと化している
「明日からまた授業が再開される。
いつまでも夏休み気分ではなく二年生は・・・。」
それにしても今年の夏休みは盆に父方の田舎に行った以外は特にこれといったこともなく、夏祭りは近所に友達がいないから行かなかったし、海はそう言った話こそ出ていたものの結局お流れになってしまった。
こんなことならば休みの間に一人で旅行したり、少し遠いところにでも出かけるべきだったな。
「立花校長先生ありがとうございました。
それでは次に表彰に移ります。
今年もたくさんの部活、同好会が賞を取ってきました。では野球部・・・」
校長先生の話はいつの間にか終わっており始業式最後の難所、表彰状授与式に移っていた。
俺の通う高校はなぜだか知らないが勉強、運動に限らず全国の高校の中でもトップクラスな奴が多いらしく
それ故か表彰状の数も物凄く多い。
今年は・・・、47個!?
馬鹿じぇねの?そんなやってたら暑さで倒れるぞ!?
その後、時間がダラダラと進むにつれ俺の眠気も最高潮に達した時ソレは起こった。
「えー、次に文芸部。
文芸部は今年の全国高等学校文芸コンクー・・・エエッ!?」
それまで滞りなく話していた生徒会の一年生が驚いたような声を上げた。
なんだ?床が光っているな
「・・・光っているな!?なんだこれ!?」
思わず俺も驚いて叫んじまったが他の生徒たちも騒いだり泣いたりしていて俺の叫び声は誰も気づいていなかった。
あれよあれよという間に光量が増していきそれにつれてなぜか頭がボーっとし始めた、
抵抗も空しく俺は意識を手放した。
人の気配がする。
意識が戻って目を瞑ったまま起き上がるとどうやら硬い地面に仰向けになって倒れていたらしく背中が固まっていて痛い
そして先程までは熱気と湿気でムンムンとしていた体育館の空気とはうって変わってひんやりとしており何か分からないがお香の様な匂いがする。
俺以外の生徒や教師も俺同様に倒れていたらしくうめき声が聞こえてくる。
思い切って目を開けてみた
・・・俺は体育館にいたはずだが。
この部屋?間?はなんだ?
そこはサッカーコート程の大きさはある部屋で大理石の様な床には何やら文字や記号が書かれている
壁には窓はなくクリスタルの様な物体が淡い光を放ち視界を保っており幻想的な雰囲気が立ち込めており、俺達の目の前には白いローブを着た集団がくちをポカンと開けこちらを見ている。
一瞬の間の後、白ローブたちは雄たけびを上げた。
「やったぞ!!
召喚は成功だ!!」
「やりましたね神官長!!
これでこの国は救われる!!」
白ローブ達がひとしきり歓喜の雄たけびを上げた後
混乱する俺達にやっと気づいたのか白ローブの一人が俺達の前に出てきた
ソイツは金髪の太った男で
フードの隙間から見えた大きな目と半分空いた口が大きなカエルを思わせ
なんか、気持ち悪い。
「異世界から参られし勇者様方、トアル王国へようこそいらっしゃいました
私はトアル王国で神官長を務めておりますジャヴァ・オブヅと申します。
お話は国王様が直々にされるそうなので付いてきていただきたい。」
そんなこと言われてもねぇ、
案の定かなりの数の生徒が騒ぎ出した
「何よこれ!?
私家に帰れるの!?」
「あ゛?ふざけんなよテメー!!
さっさと返しやがれ!!今日はこれから妹迎えに行かなきゃならねえんだよ!!」
「異世界キターーーーーー!!
ハーレム築いて俺TUEEEEEEだ」
若干一名馬鹿な事叫んでいるが
うん、俺も帰りたい。
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