概要
君の手なんて触れられないし、私はナイフも握れない
「私、『せいけんお』なのよね」
彼女は何の脈絡もなく、そう言った。
彼女は何の脈絡もなく、そう言った。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!独特な『生』のありかた
本作に出てくる彼女のロジックは、常に自分自身の『生』に真向かっており、故に、隣り合わせの『死』に関する哲学も並行している。
自分自身の『生』を忌む彼女曰く、『死』とは『生』が在るという実感の最たるものであるらしい。故に『死』は選ばない。しかし、『生』でいたくはない。
彼女の意見は常に、どう生きる、どう死ぬ、そこに限定されていないのだ。偉大な死生観はたまに、常軌を逸した論法で人々を驚かすことがあるけれど、そういった迫力とはまた別のものをこの作品は内包している。『生』でなくなる方法をとれば、『死』という限りない『生』からの暴力が襲いかかる。ここに、『生』と『死』が実は対極のものとして書かれていな…続きを読む