201
◇
ヘアメイク&ファッションショーは大盛況に終わった。
beautiful magicはグランプリに返り咲き、beautiful loungeは惜しくも準グランプリに終わった。
ステージを降りた三上は、香坂にこう言い放った。
「来年は必ず蓮さんを倒します」
その言葉に香坂は口角を引き上げ、二人は固い握手を交わす。
「波瑠、楽しみにしてるぜ」
二人の友情に胸が熱くなる。
控え室に戻った私を、香坂は逞しい腕で抱き締めた。
「れ、れ、蓮さん!? おめでとうございます」
「俺だけの実力じゃない。類がいたからグランプリが獲れたんだ。類、何があっても波瑠だけには、渡さねぇからな」
「えっ? えっ? 蓮さん、それって……?」
言葉を遮るように、重なった唇……。
――あの日、脳裏に浮かんだシルエットと重なる。
商品部に異動する前に、フェイシャルエステの特訓中に香坂にキスをされ、脳裏に浮かんだのは、三上でも鳴海店長でも、諸星でも恭介でもなかった。
このイジワルな香坂蓮だった……。
商品部に異動したあとも、あの唇の感触とあの指先の感触を忘れたことはない。
もう一度その時のシルエットを確かめるために、私はゆっくりと瞼を閉じた。
◇◇
休日になると、beautiful magicには地方からも予約客が訪れる。
「あった! beautiful magic! 凄い! 私は香坂蓮さんに、雑誌と同じ髪型にしてもらうんじゃ」
「私は類さんにフェイシャルエステしてもらうんよ。類さんは同じ広島出身で、憧れの存在じゃけぇね。いつか私もエステシャンになって、東京で働きたい」
二人の女性が、羨望の眼差しでbeautiful magicを見つめた。
◇
――美しい男達に翻弄され、女は妖艶に光輝く。
そして閉ざされた未知の扉を開くのだ。
ドキドキするような……。
美のマジックを追求するために。
――今日も私達はお客様に美を提供する。
より美しく、より華やかに。
beautiful magic、開店。
―THE END―
その指先に魅せられて ~beautiful magic~ ayane @secret-A1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます